[不況と地域振興券]

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【地域振興券】
 バブル崩壊以降、不況の長期化と消費税引き上げによって個人消費は落ち込み、消費不況といった状況を生み出した。そこで政府は直接消費を刺激する手段として、平成十一年、商品券の一種である地域振興券を発行した。配布対象者は、十五歳以下の子供のいる世帯主と満六十五歳以上で市町村民税の非課税者、生活保護の被保護者などで、一人二万円(額面千円の地域振興券を一人二十枚ずつ)を配布した。政府は、地域振興券発行の目的を子育て支援や低所得の高齢者の生活支援を行うことによって個人消費の喚起と地域経済の活性化とした。この施策が、必ずしも国民の消費を喚起し、景気浮揚につながったとは言えなかった。なぜなら、交付された世帯は地域振興券を優先的に利用する一方で、それによって使わずに済んだ現金を貯蓄に回したため、消費の拡大には必ずしも結び付かなかったのである。また、地域経済の活性化にも直接つながらなかった。地域振興券は量販店や大型店で使用されたケースが多く、売り上げの多くは本社のある東京へ吸い上げられていった。当初から「ばら撒き政策」という批判が強かったこともあり、国民の反応も冷ややかなものであった。
 浜松市は平成十一年三月十二日から、十五歳以下の子供のいる世帯主と六十五歳以上の高齢者の一部、約十三万八千人に一律二万円ずつ、総額約三十億円分の地域振興券を交付することにした。交付と使用期間は半年間で、九割以上の人には郵送で交付した。振興券の使用条件として①有価証券、商品券、切手などの購入、②電話、電気、水道料金などの支払いには使用できないとした。ただし、大型店舗での使用については制限しなかった。そのため大型店での使用が多く、地元の小売業の売り上げには必ずしも貢献しなかった。唯一売り上げに効果を上げたのは玩具店であった。