【光技術関連産業集積促進特区 浜松ホトニクス】
平成十五年八月、地域限定で規制緩和する構造改革特区の一つとして、浜松市を中心に三市二町(浜松市・浜北市・天竜市・細江町・引佐町)が光技術関連産業集積促進特区の認定を受けた。この特区は光・電子技術関連の研究者や技術者の集積と交流によって新規起業の促進と既存関連企業の技術力の高度化を目的としている。特区内では①外国人研究者を受け入れる場合の在留許可期間が三年から五年に延長され、②民間企業が浜松医科大学や静岡大学工学部など国の研究施設を使用する手続きを簡素化できるなどの特例が適用される。この指定に伴って、十年後にベンチャー企業創出五十社以上、光関連技術の特許化百件以上を目標にした。
特区認定の背景には、浜松地域における光産業の集積と発展があったことは言うまでもない。昭和六十年段階で、浜松地域には光関連企業は約四十社集積しており、二十一世紀の主導産業になることが期待されている。浜松地域で光産業を牽引してきた企業は、昭和二十八年に創立した浜松テレビである。設立当時から光を産業化することを目論み、光電管、光電子増倍管などの研究開発を行ってきた。昭和五十八年には浜松ホトニクスに社名を変更し、国内の大手企業との取り引きだけでなく、海外への輸出や取り引きも拡大していった。地域産業の先端産業化を目指した浜松地域テクノポリスでは、その中核的企業に位置付けられている。また、平成十四年にノ―ベル物理学賞を受賞した小柴昌俊東大名誉教授のニュートリノ検出には浜松ホトニクスの貢献があった。小柴東大名誉教授が地底に水をたたえた素粒子観測装置・カミオカンデをつくる際、利用されたのが浜松ホトニクスによって開発された光電子増倍管であった。
【光産業創成大学院大学】
さらに、浜松ホトニクスは光技術による新たな産業の創成を目指す優秀な人材を育成するために大学院大学の設立を計画した。この大学院大学の特徴は単に知識を得るだけでなく、学生自らが起業することで成果を出し、光産業のパイオニアを育成するところにあった。それを実現するために、教育課程の中に企業を起こすためのプログラムが組み込まれている。博士課程後期の三年には、経営と技術のスキルを向上させ、学位を取得し、企業を起こすことを目的にしている。平成十七年四月、光産業創成大学院大学は呉松町の浜松ホトニクス呉松研究所内に開学した。