[新しい野菜の誕生]

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 全国有数の都市近郊農業を発展させてきた浜松の地域農業は、経済のグローバル化に伴う食スタイルの国際化に合わせて、海外生まれの野菜や新しく誕生した野菜を数多く栽培するようになった。JAとぴあ浜松管内で昭和後期から平成にかけて栽培されるようになった主な野菜をJAとぴあ浜松の広報誌『とぴあ』から紹介することにしよう。
 
【サラダナ】
①サラダナ  原産地は中近東の小アジア(トルコ)と言われており、レタスの仲間である。平成八年現在、静岡県は全国シェア三十%を占め、県内生産の九十%以上がJAとぴあ浜松管内で栽培されている。サラダナの生産は神久呂や雄踏地区が中心で、作付面積は七十五ヘクタールで十九軒の農家が栽培している。これらの地区で生産されるサラダナは、水耕栽培の利点を生かし、冬場は完全無農薬、夏場も低農薬栽培を行い、安全な野菜として市場での評価を高めた。
 
【カリフラワー】
②カリフラワー  カリフラワーの原産地はヨーロッパ西部海岸地方と言われており、明治の初期にわが国へ伝わってきた。カリフラワーはブロッコリーを品種改良して作られた洋野菜である。当地方で栽培が始まったのは昭和三十年代後半で、神久呂や伊佐見地区でハクサイやダイコンの代替作物として導入された。平成十年現在では、JAとぴあ浜松管内の西地区(神久呂、入野、雄踏地区など)や北地区(伊佐見、和地、富塚、庄内、三方原地区など)を中心に三百二十軒の農家が作付面積三十五ヘクタールで十六万三千ケースを出荷している。当地域のカリフラワーは、質・量ともに全国のトップクラスを誇った。
 
【モロヘイヤ】
③モロヘイヤ  原産地はエジプトで〝王様野菜〟と呼ばれるほど栄養価の高い野菜である。日本に導入されたのは比較的遅く、昭和五十年代後半に埼玉や長野で手掛けられたと言われている。JAとぴあ浜松管内で平成十年現在、三十五軒の農家が栽培しており、南地区(河輪、芳川、五島、白脇地区など)の十九軒は、日本で唯一の周年出荷体制を確立した。
 
【タァツァイ】
④タァツァイ  中国の代表的な冬野菜でハクサイと同じ仲間である。日本で注目されたのは、中国野菜ブームが起きた昭和五十年代中頃である。JAとぴあ浜松管内での栽培も西地区を中心に、昭和五十七年頃から増加していった。平成九年度における生産農家数は三十四軒で年間十万ケースを出荷した。
 
【チンゲンツァイ】
⑤チンゲンツァイ  中国野菜の中で、最も日本人に親しまれているのがチンゲンツァイである。日本への導入は昭和五十年頃と言われており、タァツァイ、シャンツァイなど約二十種類の中国野菜と共に普及していった。JAとぴあ浜松管内には、昭和五十六年に浜北地区、西地区に導入された。静岡県は平成六年現在、全国シェア二十三%を占め、浜松はその半分以上を生産し、全国一の産地になった。チンゲンツァイは神久呂・雄踏をはじめ、北地区、浜北地区、東南地区(笠井、中ノ町、芳川、河輪、白脇など)、湖北地区(都田、細江、引佐など)などで栽培され、栽培農家は百八戸に上り、作付面積も百二十五ヘクタールに及んでいる。平成六年度の出荷数は百五十一万ケースで、販売額は十億一千万円に上った。
 
 そのほか、プチヴェール(ケールとメキャベツを掛け合わせて作られたアブラナ科の植物、西地区や東南地区で栽培)、マーシュ(ヨーロッパ、北アフリカ原産のオミナエシ科の植物で、ラムレタスとも呼ばれている。西地区で栽培)、スペアミント(地中海沿岸の原産でシソ科、消化、強壮、消毒効果があり、ティー、アイスクリームなどの風味付けに利用される。西地区で栽培)、スアンペア(中国原産のユリ科の植物で葉ニンニクと呼ばれている。東南地区で栽培)、チャービル(東ヨーロッパ原産のセリ科の植物で、白身の魚、生野菜のサラダなどの風味付けに利用される。西地区で栽培)、シーブレット(ヨーロッパ原産のユリ科の植物で香辛野菜としてサラダ、肉や魚料理に利用される。西地区で栽培)、バジル(インド原産のシソ科の植物でサラダ、煮込み料理、スパゲッティソースなどイタリア料理には欠かせない野菜である。西地区で栽培)、空心菜(熱帯アジア原産のヒルガオ科の植物で、若い茎葉を汁の具や炒め物に利用される。浜北や西地区で栽培)、ポアロージュンヌ(地中海沿岸の原産でユリ科の植物、煮込みやバター炒めなどに適している。西地区で栽培)、ウッコラ(南ヨーロッパ原産のユリ科の植物で香ばしいゴマの香りがしてサラダに混ぜて食べる。西地区で栽培)など多種多様な野菜が生産されている。
 しかし、これらの野菜は流行などにより価格の変動が大きく、また、産地も移動しやすいところに課題がある。