【市民農園 遊休農地】
平成元年六月に特定農地貸付けに関する農地法等の特例に関する法律(特定農地貸付法)が制定され、農地法に基づく権利移転の許可の適用を除外する措置が取られた。これにより①十アール未満の農地の貸付け、②相当数の者を対象、③営利を目的にしない農作物の栽培、④五年を超えない農地の貸付け等の条件の下で市民農園として提供されることになった。また、平成二年六月には農地にトイレ、休憩施設、駐車場などの付帯設備を設置可能とする市民農園整備促進法が制定された。農園貸し付けには市民農園整備促進法に基づく農園貸し付けと、特定農地貸付法に基づく貸し付けと二種類がある。浜松市はこれら法律に基づいて平成三年度に三方原市民ふれあい農園、同四年度に三新市民ふれあい農園ができ、その後も多くの農園が開設された。平成十四年に策定された浜松市農業振興基本計画においても「市民が農業を楽しんだり、生命をはぐくむことの大切さを認識したりする場として農業と暮らしが一体となった良好な地域社会を維持」することを掲げ、都市と農村の交流に乗り出した。その施策の一つが市民農園の開設であった。市民農園は、農業従事者の高齢化・リタイアによって遊休農地が増大する一方で、都市化に伴う市民の家庭菜園ニーズの増大といった傾向がみられ、遊休農地の活用手段として重要な意味を持った。
【農業特区】
さらに、平成十四年十二月には構造改革特別区域法における特定農地貸付法等の特例措置(農業特区)により、農地所有者からNPO法人、民間会社などに農地を貸し付けることが出来るようになった。農業特区による農地の貸し付けとして、惣菜・弁当製造販売を行っている株式会社知久(桜台一丁目)の事例がある。浜松市は、平成十七年三月に「元気なはままつ農業特区」の認定を受けて、一般企業からの農業参入を進めることにした。農業特区は遊休農地を企業が利用して農業を行うことで、農業の活性化や地産地消を進めようとする制度である。知久は生産した農産物を惣菜や弁当に使う目的で、湖東町・伊左地町・呉松町にある農地五カ所一万三百三十平方メートルに、無農薬や無化学肥料の環境保全型農業によってダイコン、ニンジン、ジャガイモ、ナスなどを生産し惣菜や弁当の食材として利用している。