【とらふぐ】
てっさ(刺身)、揚げ物、てっちり鍋などの食材として、日本人に好まれてきた高級魚とらふぐが、平成元年頃から、海流の変化に伴い遠州灘沖で大量に捕れるようになった。当初、遠州灘沖で捕獲された天然とらふぐは、ふぐの加工場を持たなかったため、ふぐの集産地である山口県下関に出荷し、加工された下関ブランドのふぐが入荷していた。舞阪漁港の平成十四年の水揚げ量は約七十三トンで、そのうち、約八割が下関に輸送され、下関の天然とらふぐとして全国に流通していた。この遠州灘のとらふぐを地元ブランドとして流通させようと立ち上がったのが舘山寺温泉の旅館業者であった。旅館業者などは、平成十五年十一月に遠州灘ふぐ調理用加工協同組合を結成し、遠鉄ホテルエンパイア内に加工工場を設立した(『新編史料編六』 五産業 史料116参照)。舘山寺温泉では十二月から二月にかけて「遠州灘天然とらふぐ祭り」を開催し、新鮮なとらふぐを旅館、ホテル、料理店で、様々な料理に仕立てて提供するようになった。今後、遠州灘のとらふぐとして地域ブランドを確立するためには、その知名度を高めるためのマーケティング戦略が重要である。