遠鉄乗合バスの利用者は、昭和五十九年度に五千万人を割り込んだものの、前年度からの浜松市営バス路線の統合によって再び増勢に転じ、平成三年には五千四百五十八万人に回復した。しかし、その後はマイカー利用の増加や交通渋滞、不況や少子化、大型店の郊外出店等を原因として、バスの利用者は減少の一途をたどった。平成十年度にはとうとう四千万人を割り込む結果となった。
こうした事態に対応して、浜松市は、オムニバスタウンの指定を目指すとともに、遠州鉄道は浜松市とも連携してサービス向上や運賃値下げによるバス利用客の呼び戻し、中心市街地活性化の手段としてのバスの利用など様々な試みを行った。
【オムニバスタウン】
遠州鉄道による都市新バスシステムの取り組み等が評価されて、平成九年十二月二十五日、浜松市は交通渋滞や環境悪化など自動車交通が抱える諸問題の解決を目的としたバス優先のまちづくりを支援する「オムニバスタウン構想」による指定を全国で初めて受けた。同構想は、具体的にはアイドリングストップ機能や車内情報発信機能を備えた超低床ノンステップバス(オムニバス)の導入とバス優先(専用)レーン拡大等をセットにして、バスの利用者を増やすというものであった。
新聞報道によれば、同計画は、平成十三年度までの五年間に、総額二十四億円で超低床バス八十五台、情報発信機能付バス三百四十台の導入、ハイグレードバス停五十カ所の整備をするとしていた。遠鉄は平成九年十一月二十二日県下初の超低床バスの運行を開始し、同十年二月から乗降調査を行うとともに、四月からは二十五台で試験走行を開始した。
【公共車両優先システム バス専用レーン】
オムニバスタウン構想の一環として平成十一年三月にはバス走行環境の改善を図るため、公共車両優先システム(PTPS)の運用を開始し、市中心街の五・二キロメートル(中沢町交差点から市役所前、伝馬、旭町の各交差点を経て八幡町交差点まで)でバスが交差点に接近すると青信号の延長や赤信号の短縮を行うバス感応式信号機の整備やバス専用レーンのカラー舗装を行った。また、平成十三年には夕方(午後五時から同七時まで)のバス専用レーンが実施されるようになった。