[福祉と地域社会の多様性]

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【高齢化】
 昭和五十年代後半から、日本は少子高齢化の問題に直面するようになった。平成十五年には、浜松市の高齢化率〔全人口に占める六十五歳以上の人口(高齢者人口)の割合〕は十七・五%に達した。これは全国十九・〇%、静岡県十九・三%と比べると低い割合であったが、平成十一年に十五%台であったことから考えると、高齢化は確実に進んでいた。
 
【核家族化】
 当時、浜松市の高齢者人口は毎年約三千人ほど増加しており、核家族化の進展で、家族内での介護力が低下してきていた。そのような中で、高齢者全般の生活の質をどのように家庭や地域社会で実現させていくかが課題となっていた。
 平成十五年には、浜松市の十五歳未満の人口(年少人口)の割合は、十五・〇%で、全国十四%、静岡県十四・五%と比べると高かったが、平成五年から十四年にかけての出生数は増減が見られず、数値的には必ずしも出生率が低下しているとは言えなかった。しかし、高齢者人口の増加の中で、相対的に年少人口の割合が低下していた。そこで、それを防ぐために、安心して子どもを産み、育てられる環境をどのように整えていくのかが重要な課題となっていた。核家族化の進展で、子育てスキルの伝承が難しくなり、子育ての不安の増大とそれに付随した児童虐待、非行の低年齢化、さらに不登校やひきこもりなど児童を取り巻く問題が増えてきていた。これらの背景には平成三年頃から深刻となった景気の低迷があった。
 また、高齢化の進み方は地域の特色によっていくらかの違いがあった。平成二年十月の国勢調査による地区別高齢化の割合(図4―33)を見ると、浜松市の中心部は主に商業地域であり、住宅も密集し人口密度は高く、高齢化率は極めて高く、年少人口は少なくなっていた。また、中心部を取り巻く市街化地域は主に住宅地域、工業地域であり、高齢化率は比較的低く、年少人口の割合は高くなっていた。その周辺の農林漁業地域では高齢化率が高く、年少人口の割合は低くなっていた。

図4-33 浜松市地区別高齢化の割合

           出典:『浜松市地域福祉計画』平成4年3月
           注:図中の数字は、平成2年10月の国勢調査のものである。なお、可美村は平成3年に合併した。
 
 都市化の進展は、住民の価値観を多様化させ、また、地域の相互扶助機能を低下させていった。しかし、浜松では、浜松まつりに代表される地域社会に根付いた伝統文化があることによって、人口規模に対して、地域社会の交流は比較的盛んであった(『浜松市地域福祉計画』平成十六年三月)。なお、バブル経済の崩壊後、生活保護を受ける世帯と人数が激増したが、この問題は第一項で触れた。