【女性の参加】
平成五年、高校生参加だけではなく、女性や障害者のまつり参加にも厚みが増していった様子がうかがえた。利町・池町・連尺町では女性同士でにぎやかな糸切り合戦が繰り広げられた。町内の男衆が考えついたものであったが、男のまつりと考えられていた浜松まつりの新展開でもあった。なお、安松町では福祉作業所・ふれあい作業所の所員・職員・父母らも軽食売店を出し、運営資金の獲得も兼ねてまつりに参加していた。車いすに乗り法被を羽織った所員の姿も見られた(『静岡新聞』平成五年五月四日・六日付)。
【障害者の参加】
障害者が実際に浜松まつりに参加することも行われ始めた。昭和十五年に実施された陸軍浜松飛行場で行われた皇紀二千六百年記念の凧揚げ大会に八歳で参加した経歴を持つ西伊場町の大工・石黒貞安は、戦後、東京で障害者が参加している祭りに自身が参加した体験があり、地元の祭りでも実現させたいと考えていた。平成八年、西伊場町自治会・同町凧揚げ会西組・メンズボランティア共生会が協力して障害者のまつりへの参加を始めた。当初は、障害を持つ児童ら十三人が車いすなどで参加し、市内中心部での御殿屋台の引き回しを体験した。参加した児童らは西伊場町の子どもラッパ隊の歓迎を受け、「西組」と書かれたおそろいの法被に袖を通し、保護者やボランティアと共に行列に加わった(『静岡新聞』平成八年五月五日付)。平成十年からは、児童だけでなく大人の障害者にも参加枠を広げ、凧揚げも見物できるようにした(『静岡新聞』平成十年四月二十三日付)。九回目の平成十六年には、肢体不自由、視覚、聴覚、知的、言語、精神などの障害の種類や年齢を問わないで参加を募った。車いす利用者や盲導犬同伴でも良いとした(『静岡新聞』平成十六年四月十八日、五月七日付)。
なお、石黒は平成十年代には、地元の西部中学校の凧作り同好会「勢組」の顧問の一人となり、子供たちが凧作りや校内の凧揚げ大会の参加を通して健全育成を図る取り組みに参加していた。