[浜名湖パルパルのリニューアルと観光地の新たな取り組み]

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 舘山寺遊園地は昭和三十四年に遠鉄資本によって開園され、その後、昭和四十六年に浜名湖パルパルと名称を変え、大観覧車やジェットコースターなどの遊具を増やし、ジャンボプールも増設して、主にファミリー層が楽しめる遊園地として発展していた。しかし、少子化や海外旅行客の増加、さらに年間の入園客数が毎年一千数百万人になる東京ディズニーランドが昭和五十八年に開園したことによって、県内はもちろん、大都市近郊の遊園地の入園客数が大幅に減る冬の時代に入っていた。平成二年の後半から始まったバブル経済の崩壊による長引く不況は各地の遊園地を廃園に追い込んでいった。戦前、静岡鉄道が開発した清水の狐ヶ崎ヤングランドが平成五年に閉園し、小田急が開発した富士宮市田貫湖畔の花鳥山脈は平成十年に、御殿場のファミリーランドも平成十一年に閉園となった。
 
【浜名湖パルパルのリニューアル】
 浜名湖パルパルがある舘山寺温泉の宿泊客数は平成二年には約七十五万人であったが、平成五年には六十五万人台にまで下落、この影響もあってか遊園地の入園客数も減少していった。そこで、家族も若者も楽しめるレジャーパークに変えていくことによって打開する方策をとった。平成九年、遠鉄観光開発はアニメで有名なやなせたかしに企画やキャラクターを依頼し、全面的な改修工事を実施した。ヤングに人気となったのは、ねじれながら斜面を滑り落ちる迫力のある日本初の四次元ジェットコースターであった。また、やなせが生み出したパレオ、トマトーナなど六つのキャラクターも登場した(『静岡新聞』平成九年七月二十日付)。その後、パルパルは平成十年、十一年とリニューアルを実施した。
 
【舘山寺温泉観光協会 舘山寺温泉周辺地区整備構想】
 このようなバブル崩壊後の困難を打開する試み(表4―26参照)は、舘山寺温泉観光協会を中心に、各種の診断報告書や提言を基に、平成十一年に舘山寺温泉周辺地区整備構想を『かんざんじ温泉開湯40周年記念誌』に発表し、平成十三年には、おもてなしの接客サービスを観光に携わる一人一人に徹底させるため、『浜名湖かんざんじおもてなしテキスト』が発行された。
 
表4-26 舘山寺の観光関連の出来事と宿泊客数の推移
観光関連の出来事
宿泊客数
 (万人)
平成2年
県音楽公園基本計画策定委員会の初会合。
74.6
3年
3番目の源泉の通湯式。国民宿舎浜名湖かんざんじ荘の改築オープン。
71.1
4年度
「浜松市舘山寺地区観光(産地)診断報告書」がまとまる。
67.4
5年度
湖岸道路マイロードの愛称が「浜名湖ベイストリート」と決まる。浜名湖パル
パルにアストロジェットやジャンボプールがオープン。
65.8
6年度
「浜松市観光ビジョン」がまとまる。
65.6
7年度
浜名湖ベイガーデンがオープン。さくら祭り開催。
67.2
8年度
フルーツパークがオープン。浜松おかみさんの会ピュア21が集いを開催。
66.8
9年度
浜名湖パルパル、リニューアルオープン。新キャラクター発表。浜名湖開
湖500年祭記念シンポを開催。
63.4
10年度
「舘山寺温泉21計画(基本構想)」の取りまとめ。開湯40周年記念シンポジ
ウムの開催。
59.8
11年度
『かんざんじ温泉開湯40周年記念誌』を発行。
(「舘山寺温泉周辺地区整備構想」掲載)
61.2
12年度
市は「もてなしのまち・浜松推進運動」を市民運動として開始。
58.3
13年度
無料巡回バスが1日11往復の運行。
『浜名湖かんざんじおもてなしテキスト』発行。
55.9
14年度
ワールドカップ・サッカー日韓大会、エコパ(袋井市)で開催。
56.8
15年度
第58回国民体育大会開催。国民宿舎浜名湖かんざんじ荘に民間公募の
所長が就任。
56.7
16年度
しずおか国際園芸博覧会(浜名湖花博)開催。
63.5
出典:『静岡新聞』、『浜名湖かんざんじ温泉40周年記念誌』、平成3年度『浜松市舘山寺地区
   観光(産地)診断報告書』、舘山寺温泉旅館組合提供の資料より作成

 
 客筋も団体客から家族や友人連れの個人客に変わり、大宴会が出来る近代的な鉄筋コンクリートの大型ホテルよりも、旅情を漂わせる古風な建物や街並みなどが求められるようになってきていた(『読売新聞』平成十六年十月一日付)。また、地産池消や健康志向の高まりを受け、地元農家の協力を得た観光農園が注目されたり、ホテルにリラクゼーションスペースを設けたりするなどの動きが起こっていた。また、女将による町おこしや、観光業者だけでなく地域住民の声を取り入れた地域おこしのための話し合いが持たれるようになってきた。平成十三年には、温泉街・動物園・フラワーパークなどの観光地を結ぶ無料巡回バスもスタートさせた。
 平成十六年に開催された浜名湖花博は、舘山寺温泉の年間宿泊客を約七万人も増加させたが、その後、宿泊客数は減少傾向に転じた。
 
【浜名湖かんざんじ荘】
 昭和五十年代から宿泊客の減少が続いていた市営の国民宿舎舘山寺荘は、平成二年から大規模なリニューアルを行い、平成三年四月に再オープン、名称を浜名湖かんざんじ荘とした。休憩のみの日帰り客は以前の二~三倍(三万人超)になり、平成十一年には約四万七千五百人と増加していった。しかし、宿泊客数はやや回復したものの、減少傾向が続いた。そこで、黒字化を目指して平成十五年十月から民間公募の所長が就任することになった。