【西部中学校 ふれあいルーム】
平成十年代になると、市教委のふれあい教室の活動だけでなく、学校や民間でも不登校の子供たちに対する取り組みが活発になった。このうち、西部中学校では平成十二年六月から不登校傾向の生徒が静かで温かな雰囲気の中で学べる支援教室としてふれあいルームを開設した。当初は悩み事相談や室内ゲームなどであったが、生徒から自分が分かるところからもう一度勉強したいという声が上がり、学び直しの教科学習会であるふれあいルーム学習会を同年十二月から始めた。「この学習会の目的は、①各教科の基礎・基本を押さえ、②学習の中でわかりにくくなったところから、③わかりやすく、順を追って着実に理解を計ることです。また、④かつて学習したところの復習もできます」(西部中学校「ふれあいルームだより」7号 平成十三年一月十五日発行)とされた。国語、社会、英語、数学など教科学習のほか、ギター演奏や食べ物作りや実験、地域の史跡散歩など様々な取り組みが放課後を中心になされていった。自分の教室に入りづらい生徒だけでなく、不得意な教科を改善したい生徒も集まってきた。教師の間でも自分の担当教科を教えるということから抵抗なく参加する者が増えていった。そこで、平成十三年度は時間割表を作り、午後の五時間目から、さらに一時間目からこのルームを開設するようになった。同十五年度からは、全教科の授業を多くの教員の協力によって始めるまでになった。学級に入れなかった生徒も、担任の熱心で分かりやすい授業に接したり、学級の雰囲気が温かく感じられるようになったりして、徐々に学級に戻っていくようになった。何よりも、ふれあいルームには、不登校の生徒だけでなく、何人かのクラスメートも顔を出し、一緒にカードゲームをしたり、楽しい語らいがあった(西部中学校「ふれあいルームだより」1~32号、平成十二年度~十六年度)。
このように市のふれあい教室から刺激を受け、学校独自で行った不登校対策に多くの教員が参加し、様々な教科補充学習を進めていく試みは、不登校傾向の生徒だけでなく、発達障害を抱えた生徒の支援にとっても有効であり、後年、文科省が進めていく特別支援教育の先駆けでもあった。なお、ふれあいルーム学習会には、数名の地域の学習ボランティアが参加し、凧作りや凧揚げ活動(西部中では地元の人々の協力により凧揚げの「勢組」が結成され、その部屋も用意されていた)など、地域に開かれた活動がなされていた。