【浜松救急医学研究会 大久保忠訓 岡田眞人】
平成十一年四月二日付の『朝日新聞』には、四月一日に浜松市内の病院や消防関係者らでつくる浜松救急医学研究会(会長大久保忠訓)によるドクターヘリの試験運用の開始記事が見える。この実施に当たっては浜松市を中心とする県西部地区で公園や河川敷など六十カ所にヘリポート使用の許可を取っていた。また、同十一年四月六日付の『毎日新聞』には、前日の五日、初めて緊急出動の実務があったことを報じている。同日午後二時九分、龍山村の診療所から聖隷三方原病院への緊急出動要請があった。山仕事の三十代男性の事故である。要請から約十分後に医師二名を乗せて離陸し、約十分の飛行で二十三キロメートル離れた同村総合グラウンドに着陸。医師の診察後に再離陸。午後二時四十四分に聖隷三方原病院に戻り、手術室に直行した。同病院の岡田眞人副院長は浜松救急医学研究会の立ち上げに尽力した医師であるが、その談話として、「欧米ではドクターヘリが普及している。平均15分で現場に着く。これに対し、日本は救急車で約26分が平均といわれる。この差を埋めるにはドクターヘリの導入が必要。」という。
また、同十一年四月八日付の『静岡新聞』には、「〝空飛ぶ医療〟開始1週間」という記事がある。その内容はヘリポート不足問題に直面していることを報じたものである。すなわち、県西部の十八病院のうちでヘリ基地になっている聖隷三方原病院以外、浜松市内の中核病院にはヘリポートはない。浜岡総合病院、袋井市民病院、掛川市立総合病院等ではヘリの離発着が可能という。医療の原点が救命救急医療にあることを実践するためにも、まさに課題山積というものである。