医薬分業の実施

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 浜松地区の総合病院で初めての医薬分業に踏み切ったのは浜松医科大学医学部附属病院で、平成六年四月十九日のことであった(平成六年四月十六日付『静岡新聞』)。ただし、県内では十七番目。この時点では小児科(平成五年四月から試行)、耳鼻科、眼科、整形外科、皮膚科、歯科口腔外科の六診療科で実施された。同病院が発行する処方箋を受ける保険薬局は、右時点での表記では浜松市内と浜北市、磐田市、引佐郡引佐町で約百二十軒。厚生省薬務局企画課によると、人口千人当たりの月間処方箋発行枚数は平成四年十月現在で、全国平均百二十五・八枚、県平均八十三・九枚、県西部地区は二十八・七枚、浜松地方の医薬分業の遅れが目立つと記している。
 この状況を踏まえて平成七年四月に実施予定(実施は平成七年五月)の県西部浜松医療センターは、医師・薬剤師・看護婦らの医薬分業の理解を深めるために、院内研究会を開いている(平成六年三月六日付『静岡新聞』)。
 
【医薬分業推進支援センター浜松】
 また、一般社団法人浜松市薬剤師会は薬局と医薬品情報の拠点となる医薬分業推進支援センター浜松を平成七年度から開設することを決定した。場所は県西部浜松医療センターに隣接する市有地を借りるという(平成六年四月二十二日付『静岡新聞』)。
 一般社団法人浜松市薬剤師会のホームページには、医薬分業推進支援センター浜松を構成する部局とその解説が記載されている。浜松センター薬局(処方せん調剤など)、医薬品備蓄センター(薬価基準収載品目約二千六百品目を常備)、医薬品情報管理センター(医療機関等や一般市民への情報提供など)と、研修センター(薬剤師、薬学生を対象の研修)である。これにより地域保健医療の向上に資したいという。
 医薬分業を推進するに当たっては、平成九年四月、薬剤師法の改正がこれを促進させている。薬剤師法第二十五条2によって、薬剤師による薬剤の適正な説明、情報提供が義務付けられたのである(『新編史料編六』八医療 史料15)。
 
【保険薬局】
 他方では、医薬分業は保険薬局の新設、いわゆる門前薬局を増加させたのである。それゆえに営業利益をめぐる紛争が発生する。平成七年三月二十四日付の『静岡新聞』の報道に表れている。それは県西部浜松医療センター前の医薬分業推進支援センター浜松横に東京の業者が保険薬局を開設することが明らかになったからである。また、平成八年六月一日発行の『浜松情報』では大型薬局の出店攻勢を伝え、平成十三年十二月一日発行の『浜松情報』においても、平成十四年四月、医薬分業に踏み切る聖隷浜松病院の動きを察知して同病院の周辺地区では門前薬局の開設のための「陣取り合戦」が始まったと報じている。同病院はベッド数七百四十四床、処方箋は一日当たり約千五百枚。薬局業界の注目するところである。これほどの処方箋を発行する病院を背景にして、次に起こる問題は在庫不足や薬剤管理である。