平成元年十月二十六日付の『静岡新聞』には、同月二十五日に浜松医科大学と浜松ホトニクスが共同で進めるメディカル・ホトニクス・ミーティング(MPM)研究発表会が、浜松医科大学で開かれたことが報じられた。このMPMの研究会は昭和五十九年に第一回が開催されて以来九回目で、浜松ホトニクスは「近赤外光による頭部酸素モニター装置」を紹介した。浜松医科大学は「内耳血栓モデル作成の際の光増感反応の利用」などを報告した。静岡大学電子科学研究科からは「色パターンに対する視覚系感度の測定」などが発表された。なお、右の『静岡新聞』には浜松ホトニクスの寄付による寄付講座「メディカルホトニクス講座」が浜松医科大学に設置され、MPMとともに研究推進が期待されると記している。
【晝馬輝夫】
浜松医科大学の『開学20周年記念誌』に宮川厚夫が記す寄付講座の経緯を摘記すれば次の通りである。すなわち、この寄付講座は浜松ホトニクス株式会社(代表取締役社長晝馬輝夫)の寄付の申し出を受けて、平成元年十月一日より三年間の期限で設立された。予算は年間三千万円、総額九千万円で全額浜松ホトニクスの寄付金である。講座の構成は客員教授一名、教員一名。右の予算で人件費から実験装置、器具試薬、光熱水道費など全て賄うものである。
【浜松医科大学光量子医学研究センター】
右講座は平成四年九月三十日、予定通り終了したが、浜松ホトニクス株式会社から引き続き寄付を受けることができ、同年十月一日より三年間の期限で、浜松医科大学光量子医学研究センターに、寄付研究部門「光テクノロジー(ホトニクス)研究部門」として発足している。
図4-38 浜松医大に出来た光量子医学研究センター
【ワークショップ】
浜松ホトニクスが浜松医科大学に寄付講座を開設したのは最先端の光科学技術を探求するためであるが、他方、浜松ホトニクスは啓蒙活動としてのワークショップにも尽力している(平成七年八月二十三日付『静岡新聞』)。それは全国の医学部・理学部・農学部の大学院生や助手、民間企業の研究員を対象とするもので、平成七年八月二十日から二十六日までの活動である。光学顕微鏡にビデオカメラとコンピュータを組み合わせたビデオマイクロスコープ装置を使い、生きた細胞からホルモン分泌の様子を観察する技術を高め、将来の生命科学に役立てるための講座という。
テーマは三分野。①細胞伝達物質であるカルシウムの濃度を生きた細胞の画像から測定する「細胞内カルシウム分布測定法」、②光学顕微鏡に画像処理を加え、三万~四万倍の倍率で細胞を観察する「超微細形態測定法」、③ラットの脳細胞に電気信号を加えて反応をみる「活動電位分布測定法」。参加者は二十日に各分野の基本技術を学び、二十一日からは各分野のトレーニングコースに入るという。
これらのことは浜松ホトニクスが先導し、県西部浜松医療センター、浜松医科大学、静岡大学工学部が参画することによって進展しているのである。