[若手音楽家の登場]

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【浜松ゆかりの芸術家顕彰 仲道郁代】
 浜松市が浜松ゆかりの芸術家顕彰制度を創設したのは平成六年度のことである。当時の新聞によれば、それまで浜松市には若手芸術家を顕彰する制度がなかったので、市の芸術文化の振興と高揚を図るため、五十歳未満の浜松ゆかりの若手芸術家を対象にした表彰制度を創設したということのようである(『静岡新聞』平成七年一月二十八日付)。この第一回受賞者は音楽部門の仲道郁代であった。仲道は浜松市の出身で、その経歴については、彼女の著書『ステージの光の中から』(平成九年刊、音楽之友社)巻末に次のようにある。
 
  桐朋女子高校から、桐朋学園大学に進み中島和彦氏に師事。同大在学中に第51回日本音楽コンクール第一位、同時に増沢賞を受賞。その後文化庁在外研修員としてミュンヘン国立音楽大学へ留学、クラウス・シルデ氏に師事。第42回ジュネーヴ国際コンクール最高位受賞、メンデルスゾーン・コンクール第一位及びメンデルスゾーン賞受賞、エリザベート王妃国際コンクール入賞。1988年村松賞、93年には第23回モービル音楽賞奨励賞を受賞するなど日本を代表する国際的ピアニストとして活躍中。
 
 浜松市役所文化政策課の公表しているところによれば、平成二十三年度までの同制度による受賞者は二十七名。この中では、音楽部門での受賞者が圧倒的に多く十五名を数える。これを見ても、浜松地域に若手音楽家が育ち音楽文化が着実に根付いてきているということが言えそうである。以下、十五名の名前・ジャンル・年度を記しておく。
 
  仲道郁代(ピアニスト、平成六年度) 黒田晋也(オペラ歌手、同七年度) 伊藤康英(作曲家・ピアニスト、同八年度) 須川展也(サクソフォーン奏者、同八年度) 河合尚市(指揮者・作曲家、同九年度) 永田直美(オペラ歌手、同十年度) 牧野正人(オペラ歌手、同十一年度) 椙山久美(バイオリニスト、同十二年度) 仲道祐子(ピアニスト、同十三年度) 渡瀬英彦(フルート奏者、同十四年度) 上原ひろみ(ジャズピアニスト、同十五年度) 森下幸路(バイオリニスト、同十六年度) 村松崇継(作曲家・ピアニスト、同十八年度) 鈴木重子(ヴォーカリスト、同二十二年度) 高井治(劇団四季俳優、同二十三年度)
 
このうち、伊藤康英は浜松市出身、東京藝術大学音楽学部作曲科卒。平成十九年に制定された浜松市の新しい市歌の作曲者である。仲道祐子は仲道郁代の妹。桐朋女子高等学校音楽科に進み、昭和六十一年渡独。ミュンヘン国立音楽大学、同大学院ピアノ科と室内楽科卒。鈴木重子は東京大学法学部卒、ヴォーカリストとして著名で幅広い活躍を見せている。
 
【浜松市教育文化奨励賞】
 なお、浜松ゆかりの芸術家顕彰は、それまであった浜松市教育文化奨励賞と並行して、平成六年度から設けられた制度であったが、平成二十二年度からこの二事業は統合され、新たに浜松市教育文化奨励賞が設けられた。これは、それまであった浜松市教育文化奨励賞とは別のもので、市民等の活動を奨励する地域文化賞と、国内外において広く活躍するものを顕彰する浜松ゆかりの芸術家の二部門で構成されている。