昭和38年及び39年に『弘前市史』藩政編・明治大正昭和編の2冊が、市制70周年記念事業として出版されました時、近世史・近現代史に暗い私は全く関与しておりませんでした。その為か、この市史二冊の書評を『弘前大学国史研究』35号(昭和39年6月)に書くことになりまして、弘前の歴史について俄か勉強をしたことでしたが、その際、一番不便で、かつ不満だったことは、史料篇が編纂されていないことでした。そこで書評の末尾で、引き続き史料篇の刊行を企図されるよう市当局に対して希望し、「それも腰を据えた事業として、完成は市制施行100周年記念の日でも結構といったぐらいの覚悟で」と書いたことがあります。
この希望はそのままの形では実現しませんでしたが、それから早くも30年、その間、弘前を中心とする地域史の研究は着実に進み、今日、そのまさに市制100周年記念事業として行われた『新編 弘前市史』全11巻の第1巻目が、「資料編1」(考古編、古代・中世編、2分冊)の形を取って世に問われようとしております。誠に感慨なきを得ません。
余り適任とも思えない私が、敢えて監修の責めに任じておりますのは、長い間一市民としてお世話になりました弘前市、この第二の故郷たる弘前市に対し、些かの御恩報じをしたいからでありますが、なにせ市史編纂は地味な、根気のいる、しかも長丁場の仕事であります。皆様の御支援を心よりお願いして御挨拶と致します。