刊行に当たって

編集委員長 森山泰太郎

 

 『新編 弘前市史』刊行の議が定まって5年、各専門部会の調査研究の成果を、いま「資料編1」でお知らせできることを喜びたいと存じます。
 30年前の『弘前市史』は、通史の2巻だけで資料編までは及ばず、今度の〝新編〟で実現したことをまず特記したいのであります。
 本書「考古編、古代・中世編」について第一に言えますのは、地質や考古資料にしろ編年史料にしろ、それぞれ学問の性質上、現在の「弘前」を含む津軽の広範な地域に係わらざるを得ず、広く包括する内容で収録する結果になったことであります。
 そのために当初予定したページ数を、かなり上回ってしまいました。もとより、取捨の線引きをさまざま検討した上でのことで、市当局及び読者市民各位のご理解を切にお願いしなければなりません。通史編と違いまして、専門的資料文献を収録しました本編は、即読のおもしろさよりも、史実の根拠を知る楽しみがあるわけですから、その意味で親しまれる「資料編」にしていただければ幸いであります。
 いま県内の考古遺跡の発掘から、わが国原始文化の再認識に大きな反響を呼んでいますが、それら津軽の関係史資料が本書に概ね集約されたこと、また金石文の総覧においてもこれまでの記録に再検討を加えた点など、今後の活用に十分役立つものと信じております。編集委員の仕事はこれから本格化します。大方のご期待に応えるべく、一層の努力を傾注致します。