*1 カルデラ (caldera) …円形またはそれに近い火山性の凹陥地。
*2 デイサイト (dacite) …石英安山岩。日本では、新第三紀及び第四紀の火山岩類中に多産する。化学組成上、SiO2の平均値が65.7%を占め、斑状組織を成す。斑晶は斜長石・石英・角閃石・黒雲母または輝石から成り、石基はガラス質または微晶質である。
*3 珪藻土…主として珪藻の殼から成る軟質岩石または土壌。天然の珪藻土は不純物を含むほか、放散虫・海綿骨格や二次的沈殿のタンパク石などを含む。淡水種のものが一般に良質である。過助剤・吸収剤・研磨剤などに利用される。
*4 溶結凝灰岩…火砕岩の一種で、構成する火砕物が堆積当時高温を保っていたために互いに溶結したもの。溶結前の構成物質の大部分が火山灰から成る。その多くは、火砕流(火山灰流)堆積物の一部に相当し、上下の方向に非溶結の堆積物に移化する。
*5 火砕岩…火山砕屑物が固結して生じた岩石。火山砕屑岩ともいう。直接火山活動によって生じたもののほかに、それ以外の営力(風・流水など)によって再堆積し固結した岩石も含まれる。
*6 シルト (silt) …砂と粘土の中間粒子(1/16~1/256mm)の砕屑物。シルト岩はシルトが固結したもの。
*7 基底礫岩…礫岩を地層中に占める位置の違いによって分類した用語。不整合面の直上に発達する礫岩。一般に、連続性はよいが、層厚・礫径・礫種の変化は著しい。
*8 層理…堆積過程中における堆積物質の変化、または堆積条件の変化によって堆積物の内部に生ずる成層構造。日本では、単一の岩相を示す層状堆積物の最小単元としての単層と、単層の内部層状構造としてのラミナとを区別して用いている。
*9 重鉱物…砂質堆積物中に、母岩の風化、分解の残存物として含まれる比重2.85より大きい鉱物。黒雲母・普通輝石・透輝石・緑レン石・紫蘇輝石・ザクロ石・カンラン石・金紅石などのほかに含鉄鉱物類が知られている。
*10 斑晶…斑状の火成岩において、より細粒の石基中に肉眼的に目だって大きく見える結晶。斑晶を含む火成岩の組織を斑状という。
*11 反応縁…初生的または二次的結晶作用である鉱物の周縁に生じたほかの鉱物の帯状集合体。カンラン石または輝石と斜長石の接触部やザクロ石の周縁によく発達。
*12 石基…斑状火成岩中の斑晶の間をうずめている物質。
*13 カルクアルカリ岩系…火成岩はアルカリに富むアルカリ岩と、これに乏しいカルクアルカリ岩とに分けられる。玄武岩・安山岩・石英安山岩・流紋岩の岩型で代表される岩系で、久野久(1950)の紫蘇輝石質岩系に相当し、石基に斜方輝石を有することが特徴。斑晶鉱物として、角閃石、黒雲母などを含むことがあり、分化の過程で鉄がマグネシウムに対し残液に濃集する程度が少ないことが特徴。その分布は、環太平洋造山帯の火山地域に特徴的で、太平洋内部には産しない。
*14 火山弾…マグマの破片が可塑性を保った状態で火口から放出されたもので、主として直径4mm以上のもの。空中を飛行する間に、特有の外形、表面の模様、内部構造を持つ。例えば、紡錘状、リボン状の外形、パン殼状の表面の割れ目、表面に近い部分が緻密で中心に近い部分が多孔質の層状構造など。
*15 スコリア (scoria) …岩滓。火山砕屑物の一種で、多孔質で見かけの比重が小さく、黒色・暗褐色などの暗い色を示すもの。玄武岩のような苦鉄質のマグマの発泡によって生ずるものが多い。
*16 苦鉄質岩…有色鉱物(苦鉄質鉱物)の含有量が高く、色指数が70以上の火成岩。玄武岩・はんれい岩・輝緑岩などの塩基性岩。
*17 級化成層…級化層理ともいう。単層の中で、下部における粗粒から上部における細粒へと、粒度が上方に向かってしだいに低下する成層状態。
*18 杏仁状…あんず状ともいう。あんずの実のような形の鉱物集合体で、火山岩の空隙を満たす沸石・タンパク石・方解石などがしばしばこの産状を示す。
*19 互層…岩質の異なる単層が交互に繰り返し重なり合った地層。
*20 不整合…ある地層が堆積後隆起し、陸上で風化・削剥作用を受け、その浸食面上に新期の地層が堆積したとき、両者の関係を不整合という。上位層の層面の傾きと、下位層のそれとが異なる場合、これを傾斜不整合という。上位層の堆積前に、下位層が褶曲あるいは傾動などの変形作用を受けたことを示す。
*21 ラピリ (lapilli) …火山礫。直径が2mmから64mmの範囲内にある火山砕屑物。
*22 枕状熔岩 (pillow lava) …楕円体またはそれに近い丸みを帯びた団塊の集合から成る溶岩(流)。玄武岩質などの粘性の小さな溶岩流に多く見られる。水中または、沼地や湿地を流れた溶岩流に特徴的に見られる構造と考えられている。団塊は、ガラス質の緻密な皮殼を持ち、中心部に放射状の節理がある。各団塊は、ふつう独立して分離しており、間隙は変質した火山ガラスやほかの堆積物で埋められている。
*23 ハイアロクラスタイト (hyaloclastite) …主に、玄武岩質の溶岩流が水中(海底・湖底など)を流れるとき、水と接触して表皮が急冷され、破砕されて生じた多量のガラス質の小片から成る岩石。枕状溶岩と密接に伴って産する。
*24 中央火口丘…火山の中央火口またはカルデラ内部にある小型の火山、山体が円錐形かそれに近い外形を有するもの。
*25 爆裂火口…爆発的な火山活動によって生じた火口。山体の一部が破壊されて漏斗状の形をするものが多い。
*26 成層火山…溶岩流と火山砕屑物の互層から成る火山。山頂火口から溶岩の流出と火砕物質の放出が交互に行なわれ、それらが積み重なって生じた複成火山の一種。円錐形の火山体を持つ。コニーデ(konide)はほぼ成層火山に相当する。
*27 寄生火山…大きな火山(主として成層火山、楯状火山)の側面に付着している小さな火山体をいう。これらは、溶岩円頂丘か砕屑丘のことが多い。富士火山には60個の寄生火山がある。いずれも、本体の火山と同じ源から生じたものと見なされる。
*28 泥流丘 (mud flow hill) …火山泥流堆積物の表面に特徴的に見られる突起した地形。流れ山ともいう。泥流の流れた方向に底面の輪郭が伸長したり、列を作ることがある。高さは数mのものから100mを越えるものまである。
*29 スランピング (slumping) …一時的に累積していた未凝固ないし半凝固の堆積物が、水底の斜面を一団となって滑り下る作用。その結果生じた地層がスランプ層、その内部構造がスランプ構造である。
*30 真珠岩 (perlite) …多数の同心状(球状、楕円状または多面体状)ないしは渦巻状の割れ目を有するガラス質流紋岩(ピッチストーン、松脂岩、黒曜石)。
*31 ネバダ岩 (nevadite) …花崗岩質流紋岩のこと。
*32 頁岩 (shale) …剥離性の発達した泥質岩。頁岩の剥離性の一部は、堆積時の葉理(ラミナ lamina)の発達によるが、一部は続成過程で圧縮作用を受けた雲母鉱物が多いためである。
*33 指交 (interfinger) …一定の岩相を持つ地層は、横に追跡するとしだいに層厚が減少し、ついには消失し、別の岩相を持つ同時代の地層が代りに出現する。断面を取ると地層の末端がくさび状を成す。地層の末端が単一の「くさび」ではなく、多数の「くさび」を突出させたような形を示しながら、二つの隣り合った地層が接し合う状態をいう。
*34 基質 (matrix) …岩石中で径の大きな粒子の間隙が、それよりもはるかに小さな粒によって埋められているとき、後者の部分を基質という。例えば、礫岩の礫を埋めている砂泥、砂岩の砂粒を膠結する泥など。
*35 多孔質…ガスの膨張・逸散により生じた多数の空泡を持つ火山岩の構造。
*36 円礫…丸みを帯びた礫の総称。角礫の対語として一般的な意味で用いる。礫を円磨度により角礫・亜角礫・亜円礫・円礫と区分される。
*37 流理構造…火成岩体で、成分・結晶度・組織・構造を異にした部分が重なり合うかまたは柱状・板状結晶がほぼ平行に配列するかして、冷却時におけるマグマの流動線が見られる構造。火山岩(特に、ガラス質)ではごくふつうの構造だが、貫入岩にも見られる。流紋岩の名はこのような構造・組織に由来する。
*38 火砕流 (pyroclastic flow) …種々の火山砕屑物が一団となり、主に重力によって駆動された高速で地表を流下する現象。火山砕屑流ともいう。多くの火砕流は、火山の噴火によって直接生ずる。狭義の火砕流は火山灰流・軽石流・岩滓流・熱雲などを含み、非常に小規模なものから100km3以上のものまである。その堆積物は、大部分本質岩塊(軽石・岩滓など)と細粒物質(火山灰)から成り、地形の低い部分を流下した分布を示し、上面は平坦で傾斜が極めて緩いのが特徴。
*39 変朽安山岩 (propylite) …安山岩・石英安山岩及びその火砕岩が熱水変質した岩石。緻密な石理を持つ暗緑~淡緑色の特徴ある変質岩で、黄鉄鉱微晶の鉱染や、晶洞中に方解石・沸石などが形成。第三紀熱水鉱脈の金銀鉱脈・銅鉱脈などの母岩に多い。
*40 自破砕溶岩…溶岩の一部が固結した後も他の部分が流動するために、固結部が破砕された溶岩。厚い溶岩流の内部や火道から押し出される溶岩に見られる。
*41 N値…標準貫入試験のことをいう。この試験は、内径35mm、外径51mm、長さ810mmのスプリットスプーンサンプラーをボーリング孔の孔底に降ろし、63.5kgのハンマーで75cmの落差から打撃し、サンプラーが地盤中に30cm貫入するのに要する打撃回数を記録し、N値とする。
*42 B.P.…放射性炭素(14C)などによる年代測定の結果を現在から起算した年数で示すときに用いる略号。1962年以後、放射性炭素による年代測定結果については、記号B.P.は、before AD1950と読み、1950年から起算した年数を示すと再定義された。
*43 集塊岩 (agglomerate) …粗粒物質を多く含む火砕岩の総称。
*44 酸性岩 (acidic rock) …火成岩で、その化学成分のSiO2が66%以上のもの。石英・長石を主要構成鉱物とするために優白色を呈する。
*45「いわゆる沖積世」…ウルム氷期の最盛期(約18,000±3,000年前)以降における最も新しい地質時代を指す。沖積層とは、この間の水成堆積層をいう。
*46 埋没段丘…既存の段丘があまり変形せずに、より若い堆積物によって埋められたもの。河岸段丘が、河谷中または扇状地でより若い堆積物によって覆われて、元の段丘地形が認められぬもの。また海岸地域で、海面低下時に陸上または波食によって出来た段丘が海面上昇時に埋没したと認められる場合。
*47 K-Ar法…岩石の年代測定法の一つ。カリウムの同位体40Kはβ-と電子捕獲により壊変。電子捕獲で生成する40Arの岩石試料中の蓄積量とカリウムの含有量から年代が算出される。通常、100万年以上の年代測定に用いられる。
*48 玻璃質…岩石の結晶度を表す語。岩石または石基がガラスから成るときに使う。珪長質火山岩、特にその急冷層に見られる。
*49 縄文海進…ウルム氷期後の気候最良期に起きた完新世最大の海進である。貝塚の考古学的編年から9,000~6,000年の間で縄文早期から前期にかけての時期とされる。
*50 穿孔貝 (boring shell) …岩石・木材などに穿孔してその中に生息する軟体動物、斧足綱動物の総称。
*51 整合…地層間の関係を表す用語で、不整合の対語。相重なる二つの地層間に著しい堆積の間隙がなく、両者が時間的にほぼ連続して堆積している場合をいう。
*52 テフラ (tephra) …噴火の際に火口から放出され、空中を飛行して地表に堆積した火山砕屑物の総称で、ギリシア語で灰を意味する。ところで、ローム (loam) は砂と粘土がほどほどに混りあった土壌や堆積物の粒径組成名で、国際土壌学会法ではシルト・粘土含有35%以上、粘土15%以下、シルト45%以下のものをいう。日本農学会法では粘土25~37.5%含有のものを指し、そういう岩相をもつ地層をローム化レス(レスの風化層)、被覆ロームなどという。本来的な意味で命名された関東ローム層が、のちに火山灰起源とわかってからはロームに「火山灰起源」の意味を内包させる日本独特の論理の飛躍が行われ、術語の混乱を招いている。
*53 鉱染…岩石の小さな割れ目に沿い、あるいは岩塊全体にわたって鉱化ガスや熱水溶液が浸透し、不規則に鉱石鉱物が沈澱して出来た鉱床。微小な鉱石が散点する鉱床で、鉱脈・網状鉱床あるいは交代鉱床などに移化する場合があり、気成~熱水鉱床に一般に見られる。砂岩・礫岩・凝灰岩などのような多孔質の岩石に生成されやすい。
*54 珪化作用…珪酸に富む熱水溶液の作用で、緻密堅硬な珪質岩の出来る作用。珪酸分は、微細な石英や玉髄・メノウとして既存の岩石を交代。鉱床母岩の変質作用の一種として起こることが多い。
*55 コノドント (conodonts) …〝円錐形の歯〟、という意味を持つ所属不明の微化石で錐歯類ともいう。大きさ1mm前後で、リン酸カルシウムから成り、つの型・くし型・プラットフォーム型に大別される。
*56 有孔虫 (foraminifera) …根足虫類に属する原生動物。内部を内質と呼ぶ原形質で満たされ、外側を薄く外質と呼ぶ原形質で覆われる殼を持ち、外質から糸状の仮足を出して這ったり、珪藻・バクテリアなどの微生物や有機物を捕食するが、消化は外で行なわれる。
*57 斜交葉理…偽層、クロスラミナともいう。層理面と斜交するラミナ (lamina 葉理)。層理面に対して下流側へ傾斜する場合が多く、その形成時における水流の方向を復元するのに役立つ。
*58 片理…片状構造ともいう。柱状・針状または板状・鱗片状の結晶が一定方向に配列して生ずる線状、または面状の構造。片理は、結晶片岩を特徴づける構造で、雲母・緑泥石・滑石などの板状結晶の配列、または角閃石・緑レン石などの柱状結晶の面状配列によって決まる。
*59 柱状節理…岩体を柱状に分離させる節理。岩体の冷却時の堆積収縮によって冷却面に垂直に生じたと考えられる。
*60 塩基性岩 (basic rock) …岩石をその化学組成に基づいて分類した場合、SiO2含有量が約45~52wt%の火成岩をいう。玄武岩・はんれい岩など。
表1 火砕物質の分類 |
形態・構造 破片の大きさ* | 特定の形態・内部構造を有しないもの | 多孔質のもの | 特定の形態・内部構造を有するもの |
>64mm | 火山岩塊 Volcanic block | 軽石 pumice (明色,珪長質の成分のもの) 岩滓 scoria (暗色,苦鉄質の成分のもの) | 火山弾volcanic bomb (パン皮,リボン,球形,紡錘形等の外形を有する) 溶岩餅 driblet (偏平な外形を有する) |
64~2mm | 火山燐 lapilli | ||
<2mm | 火山岩 ash | ペレーの毛 Pele’s hair ペレーの涙 Pele’s tear |
表2 火砕岩の分類 |
破片の形態・構造 破片の大きさ* | 特定の形態・内部構造を有しないもの | 多孔質のもの | 特定の形態・内部構造を有するもの |
>64mm (及び細粒基地) | 火山角礫岩 volcanic breccia 凝灰角礫岩 tuff breccia | 軽石凝灰岩 pumice tuff (明色,珪長質の成分のもの) 岩滓凝灰岩 scoria tuff (暗色,苦鉄質の成分のもの) | 凝灰集塊岩agglomerate (火山弾+細粒基地) 岩滓集塊岩agglutinate 溶岩餅凝灰(岩滓)集塊岩 driblet agglomerate (agglutinate) |
64~2mm | 火山礫凝灰岩 lapilli tuff | ||
<2mm | 凝灰岩 tuff |
地学事典(平凡社刊) |
表3 主な火成岩の分類
* 色指数とは、火成岩中の有色鉱物の量比であり、色指数が大きいほど岩石はより黒く見える。
注)斜長石は曹長石(NaAlSi3O8)から灰長石(CaAl2Si2O8)まで連続的に化学組成が変化する。
An50の斜長石とは、化学成分から見て灰長石50%と曹長石50%とから成っているように見えるものである。