-農具-

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 古代の農耕具としては鋤・鍬・鎌が出土している。これらはいずれも鉄製のもので、遺跡調査の中で集落跡から一般的に検出される。このほかに、木製農具が各種存在していたことは推定されるが、腐食しやすいためこれまでのところ本県での出土例はほとんど無い。しかし、東北地方においても既に弥生時代の遺跡から、木製の三本鍬・イブリなどの様々な農具が出土していることから、古代においてもその種類は更に増加していることは想像に難くない。
 鉄製の鋤先・鍬先・鎌は、7世紀以後の多くの集落跡から出土している。鋤先・鍬先は、津軽地方では中崎館(弘前市)・荼毘館(同)・独狐(同)をはじめとして約20遺跡で出土している。この中でも古代前期(7~8世紀)には李平下安原遺跡が、また古代末期(12世紀)には中崎館遺跡のものが相当し、他は古代後期(9~11世紀)のものである。7~11世紀のものは形状でも大きな変化が認められないが、12世紀の中崎館遺跡のものでは刃部幅が広くなり、中世以後の形状に近づいたと言えよう。鉄製鎌も鋤・鍬同様に、津軽地方を中心として50点近く出土している。特に9~11世紀の集落跡での出土例が目立つ。
 このほかに、「穂摘み具」「手鎌」と称される長方形で目釘をもった刃器があるが、本稿では「苧引金(おひきがね)」とし、紡織具の項で取り扱った。

図22 古代の鉄製鋤先・鍬先


図23 古代の鉄製鋤先・鍬先・木製鋤


図24 古代の鉄製鎌