鉄製の鋤先・鍬先・鎌は、7世紀以後の多くの集落跡から出土している。鋤先・鍬先は、津軽地方では中崎館(弘前市)・荼毘館(同)・独狐(同)をはじめとして約20遺跡で出土している。この中でも古代前期(7~8世紀)には李平下安原遺跡が、また古代末期(12世紀)には中崎館遺跡のものが相当し、他は古代後期(9~11世紀)のものである。7~11世紀のものは形状でも大きな変化が認められないが、12世紀の中崎館遺跡のものでは刃部幅が広くなり、中世以後の形状に近づいたと言えよう。鉄製鎌も鋤・鍬同様に、津軽地方を中心として50点近く出土している。特に9~11世紀の集落跡での出土例が目立つ。
このほかに、「穂摘み具」「手鎌」と称される長方形で目釘をもった刃器があるが、本稿では「苧引金(おひきがね)」とし、紡織具の項で取り扱った。
図22 古代の鉄製鋤先・鍬先
図23 古代の鉄製鋤先・鍬先・木製鋤
図24 古代の鉄製鎌