-鍛冶場遺構-

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 次に、鍛冶段階の遺構について触れる。これまで、津軽地方において専用の鍛冶場遺構として検出されているものは、杢沢遺跡の3例のほかに山元(2)遺跡(浪岡町)・朝日山遺跡(青森市)の各遺跡で、それぞれ1例ずつ検出されている。
 杢沢遺跡の例でこの構造を見ると、一辺が2m~2.5mの方形の竪穴構造で上屋を持つが、一般住居で普遍的に見られるかまどは存在しない。また竪穴床面の中央部かその周辺にすり鉢状をなす炉が存在する。この炉底は強い火熱のため赤褐色に変色し、しかも多量の鉄分がこびりつき硬化が激しい。鉄滓のうち、碗形滓と称されるものはこの炉底に堆積したものである。
 素材を鍛造する際に用いられる台石は、平坦な面をもつ大礫で、この炉の周辺に設置してあり、表面には無数の鍛造剥片が付着しているのが特徴である。

図28 杢沢遺跡鍛冶遺構と出土遺物