(11)その他の生活用具

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 これまで述べてきた生産用具・生活用具のほかに、以下のような生活の道具が知られている。
 厨房の道具としては、煮炊具としての鉄鍋、火おこしの道具である火打金、木製の曲物、折敷、釣手具、箸がある。鉄鍋は、蓬田大館遺跡(蓬田村)、古館遺跡(碇ヶ関村)で出土している。

図104 平安時代の曲物底・折敷・釣手具

 古館の鉄鍋は11世紀代のものである。内面に釣手の耳を持つ内耳式のもので、この類のものでは我が国で最も古手に属する。また、蓬田大館遺跡の場合は時期が特定できない。
 火打金は12世紀の中崎館遺跡(弘前市)、11世紀の古館遺跡(碇ヶ関村)から出土している。このほか、火おこしの道具として火きり杵(弘前市荼毘館遺跡)、火きり臼(大鰐町大平遺跡)があるが、これは10世紀代のものである。7世紀~10世紀までは、一般的に火きり臼を用いた錐揉み法によるものであろう。木製の曲物や折敷などは平安時代中期以後に発達するが、製作技法的にはこの時期に既に完成されていたものと思われ、近・現代で用いられるものとほぼ同様のものである。なお、この時期の津軽地方には箸の出土例も増加する。
 身を飾るものとして横櫛の出土例が5遺跡、5例ある。このうち最も古いものは、近野遺跡(青森市)で9世紀後半代、最も新しいものは高館遺跡(黒石市)で11世紀代である。なお、漆等の塗料は炭化状態で出土していたため確認されていない。

図105 平安時代の櫛

古代木製櫛一覧表(青森県)
番号遺跡名出土地点形態の特徴時代
1近野遺跡(青森市)92H横櫛 横幅4cm・厚さ0.6cm 欠損9C
2源常平遺跡(浪岡町)43H・床面約1/3 残存10C
3高館遺跡(黒石市)86H・床面1cmあたり16本の歯11C
4大平遺跡(大鰐町)24H約1/3 欠損10C
5杢沢遺跡(鰺ヶ沢町) 9H・床面横幅5.6cm,櫛歯は32~33本(残存)10C

 下駄の出土例は6例ある。いずれも一木造りで歯を削り出したものである。鼻緒の穴がやや一方に偏在しているのがこの時期の特徴でもある。このほか、古代末期の段階では和鋏(碇ヶ関村古館遺跡)も出現する。

図103 平安時代の下駄


図106 平安時代の木製品