3.14世紀の様相

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 この時期になると青磁の出土量が多くなり、尻八館や境関館の出土陶磁器の組み合わせからすると、青磁・白磁・瀬戸・珠洲が主体となる。青磁では、簡略化した蓮弁文を有する碗や無文の碗が多く見られ、綾花状を呈する皿が出現するようである。白磁は、見込(内面)に印花文を施す例があるものの、量的には少ない。また、弘前市鬼沢地区から出土したとされる越前大甕は、現在五所川原市内に所在するが貴重な陶磁資料である(図7-3)。なお、北海道余市町大浜中遺跡*40出土の青磁等資料は、該時期の資料としては特色のあるものである。

3鬼沢出土越前甕(個人蔵)

 尻八館出土資料は、本時期も含めて13~15世紀の一級資料である。青磁では碗に簡略な蓮弁文を有する例(図8-2~5)と、雷文帯を有する例(図8-6)そして無文碗(図8-7・8)があり、皿は簡略な蓮弁文を有する例(図8-9・10)がある。特殊なものとして、前述した青磁浮牡丹文香炉のほかに酒会壺(図9-1)も存在する。白磁は口禿の碗(図8-11・12)と15世紀に多く見られる内湾形の皿(図8-13・14)がある。ほかの中国陶磁器としては、「利市」「招財」のスタンプをもつ壺(図9-2・3)があり、朝鮮の製品には三島手といわれる象眼粉青沙器や褐釉の大甕(図10-1)がある。国産では瀬戸の製品が圧倒的に多く、灰釉皿をはじめ壺・鉢も存在する(図9-4~8)。また瓦質火炉(図10-2)や産地不詳の擂(すり)鉢(図10-3)とともに、珠洲・越前の製品が搬入されている。

図8 尻八館出土陶磁器実測図(1)


図9 尻八館出土陶磁器実測図(2)


図10 尻八館出土陶磁器類・鉄製品・銅製品・石製品実測図