7.陶磁器の組成

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 以上の陶磁器類について、出土した破片数からその構成比率を見たのが表3、図16~18である。弘前市内の遺跡を中心として12世紀から17世紀代の比率を見ると、12世紀後半を主体とする中崎館では陶磁器とかわらけが双方50%となり、以後かわらけが出現しなくなる。13・14世紀になると荼毘館のように青磁・白磁の舶載陶磁器と、瀬戸・珠洲・越前・渥美などの国産陶磁器が認められ、中崎館でも見られたように珠洲の出土比率が高い傾向を示す。境関館でも、13・14世紀の陶磁器が認められるものの、主体は15世紀代の陶磁器であることから、しだいに舶載陶磁器の比率が増大する。独狐遺跡は、13世紀から16世紀までの幅のある年代観を有するため、比率にばらつきが認められる。堀越城は、16世紀を主体とするため舶載陶磁器では染付、国産陶磁器では美濃灰釉の比率が高い。
表3 青森県内遺跡出土陶磁器数(破片により集計)
中崎館荼毘館境関館独狐
遺跡
堀越城尻八館浪岡城
内館
浪岡城
北館
根城浜通
遺跡
青磁12122204256183318834830
青白磁00100000330
白磁16475595312896502160
染付00931531182131822697
中国鉄釉0000046063620
五彩00000091160
朝鮮0030031322120
瀬戸0715100240000
美濃灰釉0007280699121844669
美濃鉄釉000390206323701
志野000020622949138
黄瀬戸0000009200
珠洲1322441816126380541130
越前07100316096143110
常滑00000000310
渥美0001000000
信楽020000001480
唐津00000017634043996
瓦質土器000009237797900
産地不詳01608084074642239
かわらけ160000000000
※浪岡城・境関館出土かわらけは除いてある。
※美濃灰釉・美濃鉄釉という表記は美濃瀬戸灰釉・美濃瀬戸鉄釉を略したものである。
※産地不詳としたものは、甕や擂鉢の破片が多い。


図16 陶磁器の構成比率


図17 舶載陶磁器の出土比率


図18 国産陶磁器の出土比率

 弘前市以外の遺跡では、尻八館には13~15世紀の陶磁器が存在し15世紀を主体とするが、舶載陶磁器を60%以上の比率で出土し国産陶磁器を凌駕している。浪岡城内館も、舶載陶磁器を60%の比率で出土し尻八館と同様であるが、染付の比率は浪岡城内館が多くなる。その傾向は浪岡城北館でも同様であり、白磁と珠洲の比率が低くなる以外構成は類似している。根城は14世紀から17世紀までの長い存続年代があるため際立った特徴を示さないが、舶載陶磁器と国産陶磁器ともいろいろな種類が搬入されており、特に16世紀後半から17世紀前半にかけての美濃灰釉・唐津の比率が多い。
 浜通遺跡は17世紀前半を主体とする遺跡であり、舶載陶磁器は染付だけとなり、国産陶磁器は唐津が圧倒的に多くなる。これ以降、県内の遺跡は野脇遺跡で見られるように、肥前染付を主体とする陶磁器によって席巻されることになる。