6.十腰内遺跡

462 ~ 463 / 649ページ
(遺跡番号 02011)(図9~15)
(1)所在地 弘前市大字十腰内字猿沢
(2)遺跡の立地
 岩木山北北東麓に点在する小丘群の1つ、伝次森山(151.6m)の南西にあり、巌鬼山神社から十腰内集落へ至る農道の東側に位置し、標高約100mを測る。
(3)調査の経緯
 遺跡は、岩木山麓開発の事前調査として、昭和35年(1965)7月25日~9月10日(第1次)、同年10月28日~10月30日(第2次)の2次にわたり弘前市教育委員会が発掘調査を実施した。
(4)遺構・遺物の概要
 11本のトレンチを設定し、4か所に集石遺構が発見され、中には弧状を呈した列石も見られる。また未報告であるが、円形の竪穴住居跡が2軒発見されている。遺跡は東北地方北部の縄文時代後期に関する標式土器〈十腰内Ⅰ群(式ともいう)~十腰内Ⅵ群(式)〉出土遺跡であり、当該期の研究には欠くことのできない遺物を出土している。土器は前述のようにⅥ群に分類されているが、出土土器の大半はそのⅠ群土器である。その他の遺物では、土製品に土偶・動物型土製品(イノシシを写実的に表している。本書の巻頭カラーグラビア及び図9)・三角形土製品・鐸形土製品・瓢形土製品・環状土製品・板状土製品・耳栓、石器は石鏃・石匙・箆状石器・石錐・三脚形石器・異形石器・磨製石斧、石製品として石刀・石剣・円盤状石製品・軽石製品・磨石・凹石・石皿・垂玉類など多様にのぼる(図13)。

図9 十腰内遺跡出土動物型土製品(イノシシ)


図13 十腰内遺跡出土遺物(4)
土偶・土製品(縄文後期)


土製耳飾(縄文後期)


環状土製品(縄文後期)


匂玉ほか各種垂飾品(縄文後期)

 図版に示した遺物は、図10-1~4壺形土器、5浅鉢形土器、6・7鉢形土器、8・9深鉢形土器、図11-10鉢形土器、11~14深鉢形土器、以上十腰内Ⅰ群(式)土器、15鉢形土器=十腰内Ⅳ群(式)土器、16・17壺形土器=十腰内Ⅴ群(式)土器、図12-18鉢形土器・19台付鉢形土器=十腰内Ⅴ群(式)土器、20深鉢形土器、21注口土器、22壺形土器=十腰内Ⅵ群(式)土器。図14-1~9、図15-10~17=以上十腰内Ⅰ群(式)土器、18=十腰内Ⅳ群(式)土器、19=十腰内Ⅴ群(式)土器、20=十腰内Ⅵ群(式)土器。

図10 十腰内遺跡出土遺物(1)
1 壺形土器


2 壺形土器


3 壺形土器


4 壺形土器


5 浅鉢形土器


6 鉢形土器


7 鉢形土器


8 深鉢形土器


9 深鉢形土器


図11 十腰内遺跡出土遺物(2)
10 鉢形土器


11 深鉢形土器


12 深鉢形土器


13 深鉢形土器


14 深鉢形土器


15 鉢形土器


16 壺形土器


17 壺形土器


図12 十腰内遺跡出土遺物(3)
18 鉢形土器


19 台付鉢形土器


20 深鉢形土器


21 注口土器


22 壺形土器


図14 十腰内遺跡出土遺物(5)


図15 十腰内遺跡出土遺物(6)

 当遺跡は弘前市大字十面沢字轡に所在し、古来十面沢遺跡と呼ばれてきたらしい。本来の十腰内遺跡は現在大字十腰内字猿沢にあるカメコ山(甕子山)地域で、この地から縄文時代晩期の大洞B式~大洞C2式に至る各形式の遺物が出土しており、その中の一部は東北大学に保存されている。
※参考文献 今井冨士雄・磯崎正彦「十腰内遺跡」(岩木山-岩木山麓古代遺跡発掘調査報告書)弘前市教育委員会 1966年3月