(1)所在地 弘前市大字中別所字向野
(2)遺跡の立地
岩木山の東麓に点在する小丘陵の一つ、標高172.0mを有する高長根山の南東に位置し、枝状に伸びた舌状小台地の末端に広がっている。
(3)調査の経緯
高長根山農地改良事業として開墾し、リンゴ園化する計画が起こり、丘陵の中腹から山裾へ土石を埋流させる造成工事開始以前の緊急調査として、昭和55年(1980)5月14日~同年6月25日にかけ、弘前市教育委員会が発掘調査を実施した。
(4)遺構・遺物の概要
発掘調査はA・Bの2地点を設定して行われ、A地点では遺構の検出は見られず、縄文時代中期の円筒上層b・c・d式土器と大木8b式土器の破片を発見したにすぎない。B地点は方形(第1号)と円形(第2号)を呈する竪穴住居跡のほか、石棺墓1基・土壙2基・集石遺構が発見されている。なおこの集石遺構は23の石組ブロックによって成り立っており、それらの中の数基は下部に円形・楕円形等の土壙を有している。出土遺物は縄文時代中期の円筒上層b・c・d式土器、同後期の十腰内Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅴ群(式)土器(図22)、石器(図23・24)には石鏃(1・2)・石槍片(3)・石錐(4)・石匙(5・6・9)・箆状石器(10・11)・剥片利用の刃器(13~16)・磨製石斧(19~26)、石製品(図24)は石棒破片(27)・砥石(28)等があり、遺跡周辺で採集した石器・石製品(図23・24)として、石匙(7・8)・箆状石器(12)・石鑿(17)・小型磨製石斧(18)・半円状扁平打製石器(29)などがある。
高長根山遺跡の復元住居
図22 高長根山遺跡(縄文後期)出土土器
台付浅鉢形土器
深鉢形土器
浅鉢形土器
図23 高長根山遺跡出土石器
図24 高長根山遺跡出土の石器・石製品
※参考文献 弘前市教育委員会 『高長根山遺跡』 1981年3月