14.尾上山(2)遺跡

489 ~ 490 / 649ページ
(遺跡番号 02116)(図30)
(1)所在地 弘前市大字高杉字尾上山212~22ほか
(2)遺跡の立地
 岩木山東麓に広がる緩傾斜面の末端が枝分かれした小丘地南側斜面上に立地し、標高約52mを測る。尾上山遺跡の南約1.5kmに位置している。
(3)調査の経緯
 当遺跡は、弘前市から鯵ヶ沢町に至る津軽中部地区広域営農団地農道の路線ルート内に存在し、この路線ルートの変更が技術的に困難であるため、緊急発掘調査として、後述する尾上山(3)・鬼沢猿沢遺跡などとともに平成元年(1989)5月8日~同年8月19日にかけ、青森県教育委員会が実施し、続いて弘前市教育委員会が隣接地の調査を行った。
(4)遺構・遺物の概要
 発掘の結果、遺構には土壙10基、配石遺構3基を発見した。土壙は、平面形が円・楕円・隅丸方形の形状を呈し、大きさは開口部で計ると最大が129×102cm、最小が40×70cm、底面では最大が185×136cm、最小が43×(56+α)cm、最も深いもの163cm、浅いもの36cmである。断面の形状はフラスコ状・擂鉢状・筒形・ヒョウタン形を呈している。また、配石遺構は、集石遺構ともいうべきもので定形化されていない。下部に土壙を伴っている。出土遺物は、土器及び石器である。土器は、破片を含めると縄文時代各期のものが出土し、それらは第Ⅰ群(早期)~Ⅴ群(晩期)に分類され、ほかにⅥ群として平安時代の土師器・須恵器も見られる。
 出土土器を縄文土器の編年に合わせて形式ごとに記述すると、第Ⅰ群早期(白浜式)・第Ⅱ群前期(早稲田6類・円筒下層a及びb式・円筒下層d2式)・第Ⅲ群中期(円筒上層a・同b式=図30・同c式・同d式・同e式・榎林式・最花式・大木10式)・第Ⅳ群後期(十腰内Ⅰ群・同Ⅴ群)・第Ⅴ群晩期(大洞A及びA’式)などである。石器は石鏃・石匙・箆状石器・トランシェ様石器・石錐・不定形石器・磨製石斧・磨石・敲石・北海道式石冠・凹石・半円状扁平打製石器・抉入扁平磨製石器・軽石製品・土製品には円盤状土製品も発見されている。

図30 円筒上層b式土器 尾上山(2)遺跡(縄文中期)

※参考文献 青森県教育委員会『鬼沢猿沢・尾上山(2)・(3)遺跡』(青森県埋蔵文化財調査報告書135)1991年3月