-例言-

一、本編には、文献史料・中世城館調査資料・金石文資料を収録した。文献史料はさらに、蝦夷・津軽関係編年史料と北方関係非編年史料とに分かち、対象年次は天正十八年(一五九〇)年までとした。編年史料においては編纂物・古文書・記録類を基本として、年代順に排列し(年次不詳のものについては、推定年次の箇所に掲げた)、非編年史料については説話・物語・和歌・縁起・系図類を中心に、内容別に排列した。

一、文献史料としては、古代においてはおおむね陸奥・出羽国関係の史料から、中央政府による東北経営に関するものと、馬産に関するものとを重点的に採択した。中世においては津軽地方関係史料に焦点を当てながら、関連の深い北奥羽・北海道、さらには北アジア関係史料をもその対象とし、その地域全体の政治・社会・文化の動きが分かるように配慮した。以上のように、近年研究の進んだ北方史を理解することに主眼をおいており、対象は必ずしも弘前市内には限定していない。なお、特に中世後期については、同時代史料に乏しいため、後世の編纂物であってもできるだけこれを採り、〔参考〕として掲げた。

一、蝦夷・津軽関係編年史料においては、読者の史料読解の便宜を計るために、史料内容を要約した綱文を立てた。また時代把握を容易にするために、舒明天皇以降の時代については綱文に西暦を付した。また南北朝期については、両朝の年号を併記した。

一、誤字・誤記に対する注記、仮名書きに対してあてるべき漢字、官名・氏名の説明など編者による傍註の文字は、本文の右側に〔 〕に挟んで示した。また文意が通じないもの、明らかな誤字・誤記と断定できないものなどには、原文のまま記し、同じく(ママ)と付した。

一、虫損・汚損・破損などのため判読しがたい部分、あるいは解読し得ない文字については、その字数に応じて□を、字数を推定し得ない場合には  をもって示した。

一、漢字の字体は、人名などの固有名詞を除き、原史料の表記にかかわらず、通用字体に改めた。読点・返点・並列点についても必ずしも底本によらず、新たに付したものがある。また闕字・擡頭・平出についても、通常の文体に改めている。

一、古文書などで、本文と字体が違う部分については「 」で囲み、また朱筆については『 』で囲んで示した。

一、掲載した史料文について、他の典籍などにそれとほぼ同文、あるいは取意文が掲載されている場合には、史料文末尾に、参としてその典籍名を以下の略号をもって掲げた。

紀略=日本紀略   類史=類聚国史   略記=扶桑略記   補任=公卿補任   逸史=日本逸史

一、中世城館調査資料の凡例等については、第三章第一節を参照されたい。
一、金石文の凡例などは、第四章に随時付してあるので参照されたい。
一、本編の執筆分担は次のとおりである。
第一章・第二章 小口雅史 齊藤利男
第三章     齊藤利男 小山彦逸
第四章     佐藤仁