3 現存する天守・城門等の考察

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 四万五〇〇〇石で始まった弘前藩は、関ヶ原の戦いで東軍への加担により二〇〇〇石加増されて四万七〇〇〇石となる。
 さらに、文化二年(一八〇五)五月に、蝦夷地への出兵の功績によって七万石に直され、また、文化五年(一八〇八)十二月には、蝦夷地警衛の功によって、一〇万石への高直りがあった。
 それを機会に、九代寧親は天守閣の再建を打ち出し、現存する三層の天守閣が構築されたのである。

図6 弘前城跡 文化財配置図

 
○天守--重要文化財
 天守は、津軽二代信枚が当初に築城したときは五層であり、本丸西南隅に構えていたが、寛永四年(一六二七)九月に落雷で焼失したという。
 現存のものの棟札には「御櫓新規御造営………」とある。文化六年(一八〇九)十二月に本工事に着手し、翌七年(一八一〇)三月より六月まで石垣の積み直しを行い、七月に立柱式があり、十月には上棟式、翌八年(一八一一)三月に竣工したものである。
 また藩政期には「天守」とは呼ばれたことがないようで、明治にいたるまで、絵図面には「三層櫓」と記されている。
 柱間を六尺五寸にとり、三層三階櫓の銅板葺で、一層目は間口六間奥行五間、二層目は間口五間奥行四間、三層目は間口四間に奥行三間となっている。二階は一階の入側柱に載り、三階は二階の入側柱で支えている。
 二ノ郭に面する東南の二方向には、一階と二階とに張り出しを設け、それぞれに切妻造屋根を架けて変化を付けているが、本丸側の二面にはそれがないのが寂しい感じである。
 一階張り出し部分は石落しとなっており、二階の二面には窓を設けずに縦長の狭間だけで、内側二面に連続する小窓を取って採光を補っている。
 屋根は当初から銅瓦葺であり、外壁や懸魚の付く破風は白漆喰で仕上げてあるが、軒裏は素木のままである。
 本丸東南に建つ独立天守で、東北地方に残る唯一の遺構であり、江戸時代後期の天守建築の典型とされている。

図7 弘前城天主 立面図・平面図
(『重要文化財弘前城修理工事報告書』より転載)

 
○隅櫓--重要文化財
 隅櫓は、現存している以下の三棟とも重要文化財に指定されている。
   二の丸辰巳櫓  三重三階隅櫓 栩葺型銅板葺
   二の丸未申櫓  三重三階隅櫓 栩葺型銅板葺
   二の丸丑寅櫓  三重三階隅櫓 栩葺型銅板葺
 これら三棟の隅櫓は、ほとんど同じ形で、規模も同様であり、慶長築城の当初のものであろう。
 現存の隅櫓は、すべて土塁の上に建ち、一階は土間床で、柱間は六尺五寸である。三層三階からなっており、一階と二階とは同じ規模で、四間四方の同面積とし、一階の屋根は腰屋根となっている。三階は二階より半間ずつ小さくなり、二階の入母屋屋根に載る形となっている。
 屋根は当初は栩葺であり、土蔵造に白漆喰塗り、壁は太鼓壁で、内部には敵の攻撃に備えてか小石を詰めているが、木連格子や出窓部分には壁が塗られていない。
 有事の際に備えて、弓矢などを保管しておく場所であり、また攻撃するところでもあったので、「矢倉」「物見」とも呼ばれた。そのための矢狭間や鉄砲狭間、石落しなどが付けられている。

図8 二の丸辰巳櫓 立面図・平面図
(『國寳弘前城二ノ丸辰巳櫓、同丑寅櫓及三ノ丸追手門維持修理報告書』より転載)


図9 二の丸未申櫓 立面図・平面図
(『重要文化財弘前城修理工事報告書』より転載)


図10 二の丸丑寅櫓 立面図・平面図
(『國寳弘前城二ノ丸辰巳櫓、同丑寅櫓及三ノ丸追手門維持修理報告書』より転載)

○城門--重要文化財
 城門も、現存する以下の五棟がすべて重要文化財に指定されている。
   二の丸南門   脇戸付き櫓門   銅瓦葺
   二の丸東門   脇戸付き櫓門   銅瓦葺
   三の丸追手門  脇戸付き櫓門   銅瓦葺
   三の丸東門       櫓門   銅瓦葺
   北の郭北門   脇戸付き櫓門   銅瓦葺
 弘前城の城門は、枡形の土塁によって囲まれた櫓門である。これら現存する五棟の城門は、すべて築城当時のものとみられており、北ノ郭北門を除く四棟は、ほとんど同じ形式で、大きさも揃っている。
 北門は、大光寺城の追手門を移築したものと伝えており、他の四棟より規模も大きく、また、銃眼がないなど、形式も古いものがみられる。十七世紀後半以降は搦手門であるが、築城当初は追手門であったとされ、その後、碇ヶ関に通じる道が開かれて、三ノ郭南門が追手門に変更された。
 いずれの城門も、入母屋造で四方に腰屋根を付けた櫓門の形式であり、建揚げが高いことなどが特徴として挙げられる。また、現在はすべて銅瓦葺であるが、当初はいずれも本瓦葺であり、北門のみ栩葺であったことが知られている。

図11 二の丸南門 立面図・平面図
(『重要文化財弘前城修理工事報告書』より転載)


図12 二の丸東門 立面図・平面図
(『重要文化財弘前城修理工事報告書』より転載)


図13 三の丸追手門 立面図・平面図
(『國寳弘前城二ノ丸辰巳櫓、同丑寅櫓及三ノ丸追手門維持修理報告書』より転載)


図14 三の丸東門 立面図・平面図
(『重要文化財弘前城三の丸東門修理工事報告書』より転載)


図15 北の郭北門 立面図・平面図
(『重要文化財弘前城修理工事報告書』より転載)