元甫公和歌集

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 元甫上
  天満宮法楽
   遠村梅
 りう水を結ふ手ことに
 にほひつゝ梅さく遠の
 里もしらるる[れ(見消チ)]
 りちに逢ふ風のしらへに
 梅かゝの匂ひふきこす
 野路の一むら
   庭の花のさかりなる比
   人々のまかりしに雨の
   ふりけれハ
 木のもとに見せまほしさを

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 たれこめて花につれなき
 春雨そふる
 咲ぬ[はや(見消チ)]と[て(挿入)]とはれしものを
 こゝろなき[の(見消チ)]雨にふり行[ぬる(見消チ)]
 花のおもかけ
   待郭公
 幾夜をか待わひぬれハ
 人つてに聞もうれしき
 山ほとゝきす
 なきしとはきゝふるしても
 またしとハ思ひもすてす[おもハし(見消チ)]
 やまほとゝきす
 
 (中略)

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   伊賀の国めくりすとて
   信西法師のかける
   草蒿寺の額も今ハ
   まつ風の音はかりして
   むかし恋しきに竹の
   葉かくれより夜を残し
   たる月のさまこよのふ
   哀なるまゝにあるしの
   僧へよみてつかはしける
 捨し身のこゝをこの世の
 名残とて見はてし月の
 影そのこれる
   対松争齢
 植てこそ齢をちきれ

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 千々の秋ときハかきはの
 庭の松かえ
 枝かはしさかふる宿の
 まつかえに千とせをこめて
 影そさしそふ