水のあるところが人間の住居のできるところ。水を求めて人は住みついている。飲料水にも使っている川を「つかい川」とよび、ムラの人々は流れを汚さない心掛けをしている。また、「三尺流れればもとの水」という考えもあって、つかい川の汚れをあまり気にしない風もあった。
飲み水を汲み、そこで食器や鍋釜を洗ったりする「川ばた」などとよぶ簡易な洗い場もあった。水道が通ずるようになると豊富に水を使えるようになり、下水として流し出す水が多くなり、以前のつかい川で飲み水を汲み、食器を洗える所など、まれになってしまった昨今である。
つかい川 駒ヶ根市赤穂光前寺 昭和40年10月
村のなかを流れている「つかい川」(用水)の端(はた)には、直ぐ近くの家の川ばたがこしらえてある。この川ばたで飲み水を汲む、顔を洗う、鍋釜を洗う、野菜も洗う、田からあがってきた泥足も洗う、洗濯物もすすぐと言ったように日常生活にはなくてはならない所である。
お菜洗い 中川村片桐 昭和40年12月
信州の冬ごもりに「何はなくともお葉漬け」と、秋はこの水場で近所の人達が、話しながらお葉洗いに忙しい。
水場 伊那市高遠町西高遠 昭和55年
湧き水の清水を利川した共同の水場(みずば)。
高遠町諸町(もろまち)の旧街道沿いの水場は今も残る。
井戸舟 伊那市長谷市野瀬 昭和34年7月
木舟に山からの細い湧き水を溜めて使う。