伊那谷でも特に三河遠州に連なる地帯は、日本の民俗芸能の中でも代表的な芸能文化圏をなしているが、伊那谷のその他の地域でもそれぞれ特色ある祭りがある。
鉾持(ほこじ)神社 高遠町 昭和38年4月
祭礼の神輿の渡御(とぎょ)。行列の先頭は神社総代。その後に露払いの天狗が行く。
六道原の地蔵尊祭 伊那市美篶 昭和35年8月6日
8月6日に行われる六道原の地蔵尊の祭りは、未明から参拝の人が集まり賑かである。特に新盆の家では霊迎えといって、必ず参拝することになっている。昔は付近の松の枝を折って腰に差してお詣りしたが、今はお札と松の枝へ白紙を巻いたものを買求めてお詣りをする。この松のホエ(新梢)に新御霊(あらみたま)がついて家へ行くといわれている。お堂の南には賽の河原もある。
矢彦神社の御柱祭 辰野町小野 昭和38年5月
辰野町小野の矢彦神社の御柱祭は、諏訪の御柱の翌年の卯・酉年に行われる7年ごとの大祭である。その年の1月に伐り出された御柱は、5月に里曵きが行われ境内に建てられる。
鉾持神社の例祭 高遠町西高遠 昭和39年2月
神輿の渡御(とぎょ)が行われる。町内から若連が出て花笠をかぶり、はっぴ・白股引・麻裏ぞうりといういでたち。めいめいに三味線・笛・太鼓・大皮鼓を持って「高遠ばやし」を奏して練り歩く。
ダルマ市 伊那市高遠町西高遠 昭和28年1月
高遠町鉾持(ほこじ)神社の例祭。昔は2月14日に行われ、「十四日市」と呼ばれた。今は2月11日に行う。
神社の石段下の参道の両側にダルマ売りが並ぶ。
近郷近在からの参詣人が朝暗いうちから続々と来た。
ダルマは高崎ダルマである。
箕輪南宮神社の獅子踊り 上伊那郡箕輪町中箕輪 昭和38年7月
獅子踊り 上伊那郡箕輪町中箕輪 昭和38年7月
箕輪町木下の箕輪南宮神社の例祭は7月で、「お鹿(しし)まつり」ともいう。3才から小学5、6年位までの稚児が鹿頭を形作ったものを頭にかぶり、奉納する。天竜川を挟んで東の福与・福島と西の大泉・大泉新田が隔年交替で奉納する。
美女ヶ森のまつり 駒ヶ根市 昭和39年
駒ヶ根市赤穂の大御食(おおみけ)神社の祭礼は旧赤須村六部落の、年番制で行われている。獅子練りで有名である。
サンヨリコヨリ 伊那市美篶 昭和42年8月
伊那市美篶川手の天伯社では、8月7日、七夕のかざりの青竹を持って集まった子供たちが、太鼓をうつ二人の男のまわりを「サンヨリコヨリ」ととなえながら三回りすると、逃げようとする太鼓打ちの人をその青竹で打つ。これを3回くりかえした後、五色の幟をたて、神輿の行列は近くの三峰川の清流をこえ、対岸の桜井の天伯社にいたり、「サンヨリコヨリ」をくりかえし、その社の神と会い、また神輿の列を正して帰ってくる。
建神社遷宮(下清内路諏訪神社) 清内路村下清内路 昭和50年4月25日
享保16年(1731)頃より御遷宮の時、神楽囃子が奉納されるようになった。
お鍬祭り
享保年間(一七一六~一七三六)に伊勢の豊受神宮を祭神に迎えた。この時、飢饉があり、鍬止めの立願をし豊作を願って奉納されたもので、御神体は鉄製の鍬形をしている。
日吉のお鍬祭り 阿南町和合日吉 昭和51年4月29日
伊勢社の傍のお鍬様のご神体を神輿に移し、行列を組み、お練りをして金谷のお鍬様に向う。
日吉のお鍬祭り 阿南町 昭和51年4月
山を練りながら下り旧家金光家へ練り込む。金光家でお神酒開きがあって、一同振る舞いを受ける。
日吉のお鍬祭り・剣四つ舞 下伊那郡阿南町和合 昭和54年5月
金光家の庭で舞をまう。鈴(ずん)の舞・地固めの舞・扇四つの舞・扇三つの舞・剣四つ舞・剣三つ舞の順で神楽を奉納する。
山寺のやき餅踊り 伊那市山寺 昭和39年4月
山寺のやき餅踊り 伊那市山寺 昭和39年4月
伊那市山寺の八幡社・白山社合殿の祭典は毎年4月15日に行われる。祭典が終ると、前庭に「ねこ」を敷き神前に供えた甘酒を酌み、古い謡をうたいながら廻舞(かいぶ)する。前踊り、後踊りとあり、後踊りが終ると先を争って逃げ出す。これに遅れると悪い疫病にかかるといい伝えられている。いつ頃から始めたか不詳であるが、伊勢詣りに行った人が、近江か伊勢の附近のものを習って来て、踊るようになったのではないかといわれる。
光前寺の稚子の加陵頻(かりょうびん)の舞 駒ヶ根市赤穂 昭和31年4月
光前寺のお面 駒ヶ根市赤穂 昭和36年7月
開帳の際に奉納される舞楽、「還城楽(げんじょうらく)」に用いられる面。
光前寺ご開帳の稚子舞 駒ヶ根市赤穂 昭和31年4月
駒ヶ根市赤穂の光前寺は、60年毎(庚申年)の大開帳と7年毎の小開帳があり、稚児舞が奉納される。「加陵頻(かりょうびん)」は天冠をつけ鳥の翼を負い銅拍子を持った童子4人が舞い、「胡蝶楽(こちょうらく)」は背に蝶の羽を負い天冠に山吹の花をさし、手に山吹の花を持った童女4人が舞う。
山の神 高遠町長藤塩供 昭和35年12月
山仕事の人々は山の講といって、山の神祭りをする。十日夜(とおかんや)には餅をつき、山の神様が狩に使うようにと、篠竹などで小さい弓矢を作って供える。
弓納め神事 駒ヶ根市東伊那 昭和43年4月
駒ヶ根市東伊那の高烏谷(たかずや)神社に奉納される弓納めの神事。弓子と呼ばれる射手は10人。弓子としての奉仕は一代に一度であり、弓子に選ばれるのは氏子として非常な名誉である。