和泉の名前の由来(いずみのなまえのゆらい)

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 むかしむかし、このあたりがまだ河内(かわち)の国の一部だったときのこと。
 とつぜん地面の下から波の音が聞こえてきました。
 人々が不思議に思って、首をかしげていると、その地面から水が湧きあがり、泉と長い川ができました。

 とてもきれいな泉と川でしたので、ちかくの人が、水をくんで飲んでみたところ、たいそうおいしく、この世のものとは思えない味がしました。
 泉の水は枯れることなく、さらに、どんどん湧きだしたので、人々はこの不思議な泉にちなみ、この地を「泉」とよぶことにしました。
 やがて、「泉」は河内の国からわかれ、一つの国となりました。しばらくは漢字一字で「泉の国」と名乗っていましたが、「国の名前は漢字二字を使うこと」というきまりができてからは、よい意味を持つ「和」という漢字を頭につけ、「和泉(いずみ)の国」とあらわすようになりました。
 これが「和泉」の名前のはじまりです。
 「和泉」の名前のもととなった泉は、いまも泉井上(いずみいのうえ)神社の境内にあるというはなしです。
(府中町(ふちゅうちょう)周辺のはなし)

 
【まめちしき】
◇「和泉の名前の由来」とよく似たお話で、神功(じんぐう)皇后が泉を湧かせたという伝説も泉井上神社に残っています。興味のある人はぜひ、一度調べてみてください。
◇「国の名前は漢字二字」というきまりは、和銅(わどう)六年(713年)に元明(げんめい)天皇によって作られたといわれています。ちなみに「和」のようなかざり文字は、「雅字(がじ)」といいます。
◇河内の国とは、むかしの国の名前で、ほぼ、現在の大阪府をさし、淀川(よどがわ)より南にありました。