椿椿山画・野田笛浦賛 松竹鵲図


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 江戸時代後期の文人画家椿椿山(1801-54)が、松の枝にとまるカササギと竹を描いたもので、右下に「椿生寫意」の落款と「椿山々房」白文印を捺す。聯落ちの画仙紙を用いたようで、竹の葉の滲みも含め濃淡のコントラストが効き、枝葉もカササギの目も右上に向かう構図が美しい。
 上部の余白には儒者の野田笛浦(てきほ、名は逸、別号海紅園、1799-1859)が「落々胸中竹。一揮應手成。湘雲凝不散。満幅起秋聲」の賛をしたため、「小自在」白文引首印と「野田逸」「笛浦」の白文落款印を添える。「揮」「聲」の終画など暢達の書で、落款「笛浦小史逸」も一筆で「史」まで続けながら整っている。
 この五言絶句は、嘉永2年(1849)刊の笛浦詩集『海紅園詩稿』(『摂東七家詩鈔』巻三所収)に「畫(画)竹」の題で収められており、「落々たる胸中の竹。一揮手に応じて成る。湘雲凝って散ぜず。滿幅秋聲起こる」と読み下され、「爽快な胸中の竹を筆に托して揮毫すれば、手が自在に動き名画となった。湘江にかかる雲が凝りかたまったように竹の周りを包み、幅全体に秋の声が起こる」といった通釈がなされる。その画竹は不明とされつつも、「湘雲」を竹の背景として描かれたぼかしの雲と解されてきたようだが、本作には描かれておらず、転句のこととて、笛浦がこの絵から受けた心象風景として詠んだとも解せよう。本作の公開により、今後の考究が可能となった意義は大きい。
 
解説: 森岡 隆(筑波大学教授・博士(芸術学)) 2019.3
 
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