竹邨三陽画 生方鼎斎賛 山水図


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 本図は甲府南画家竹邨三陽が描いたもので、画中に生方鼎斎の七言四行詩を載せる。坂野家に伝来したのは生方鼎斎が玉池吟社での同門ということであろう。『玉池吟社詩』巻之三に生方寛の名がある。彼は上野(現群馬県)の人で字は猛叔、号は鼎斎を名乗る。江戸に出て書を卷菱湖に学び、幕命により通貨「天保通宝」の書で有名となった。
 絵は遠景に屹立する厓、その途中に四阿(あずまや)をおき、近景は渓谷、手前に竹林に蔽われた草庵が描かれている。竹邨三陽は中林竹洞に文人画を学び、昇仙峡を描いた『仙嶽闢路図』が有名である。浅野梅堂が編集した木版本で、安政元(1854)年の跋、甲府学問所学頭友野霞舟の題字があることから、三陽の画技は甲府勤番士を通じて広く知られることとなった。なお、本図はロール状に重なった状態のまま、虫食いの損傷が明らかで、近年になり、裏打ちの補強が行われている。
 
解説: 守屋 正彦(筑波大学教授・博士(芸術学)) 2017.9
 
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