佐竹永海画 安積艮斎賛 賢人図


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 絵は儒学者が白い紙の前に座し、筆墨をその脇に置いて、何やら思案している姿に描かれている。上部に七言絶句の賛が載せられており、「蝶是花園ニ是蝶、蝶耶園耶孰能分、人間得友一場夢、心有天遊須学君、艮斎(印)」と読める。おそらく荘子夢蝶図、あるいは胡蝶の夢になぞらえ、描いたのであろう。
 上部の漢詩は安積艮斎(1791-1861)による。陸奥二本松藩(現在の郡山氏)の出身で幕末の朱子学者で、江戸で私塾を開き、その塾見山楼には岩崎弥太郎、小栗忠順らが学び、彼の学識は吉田松陰にも影響を与えた。
 また、賢人図を描いた佐竹永海は会津に生まれ、20歳の頃に江戸に出て、谷文晁の画塾、写山楼に入門し、すぐれた画才が認められた。30歳の頃には独立。書画会や詩会に参加して評価を得て、のちに大老井伊直亮に気に入られ彦根藩の御用絵師となった。文晁門には渡邉崋山、立原杏所、高久靄崖がおり、耕雨の収集に関連している。
 画中の艮歳の詩に順えば、第4句「心有天遊須学君」を、経学を学び、漢詩など教養を楽しんだ耕雨にあてることも可能であろう。
 
解説: 守屋 正彦(筑波大学教授・博士(芸術学)) 2017.9
 
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