地層

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水海道市の台地を作る地質の主体は、武蔵野段丘とみられる成田層群の上部成田層で、海成の化石貝層である。構成貝化石はバカガイが最も多く、黒潮の流れる浅海にすむ貝化石が多い。化石は「化石床」を形成している。その上に関東ローム層と呼ばれるロームのうち、下末吉ロームにあたる常総粘土、その上に武蔵野ローム、立川ロームと堆積し、上部は表土と化している。関東ロームは赤土の名のごとく赤褐色で、やや粘りのある土で、冬になると霜柱がたち、春先には黄褐色のほこりになって吹き飛び、必ず台地の最上位を占め、低い水田面には見られない。
 低地は五箇・三妻・大生地区で海抜一六メートルから一四メートルと南に低下しながら段丘面を形成している。また大生郷地区では一〇メートル内外の段丘面となっている。成田層台地の浸食谷に堆積した海成沖積層の上に、利根川・鬼怒川・小貝川の河川堆積物が厚く積もった所で、腐植の堆積が多くなっている。
 水海道市内守谷町長の入地先玉台化石床の柱状図をもとにみると次のようになる。
 

玉台化石床柱状図

 ○表土 関東ローム層に腐植質の混じった地層で一メートルの層厚をもっている。土器片や貝塚の含まれる
  地層である。
 ○関東ローム層 本市には武蔵野ロームと、立川ロームが堆積しているが、赤城山など北関東の火山からの
  噴出物も混じっているので、その境ははっきりしていない。
   武蔵野ロームはいわゆる武蔵野の名称に由来するもので、関東平野の全域に分布している黄褐色ローム
  で、台地の切割りでわかるように、台地の原形面ができてから降灰して堆積したものであることがわかる。
   立川ロームは赤褐色、又は褐色で、立川ロームには、黒色バンドがはさまれている。
   本市の関東ローム層は赤城山や古富士・箱根の火山灰が一万六五〇〇年~三万五〇〇〇年前に堆積した
  ものと考えられる。
 ○常総粘土層 ロームの下にある青灰色粘土で、常総台地のほとんど全域に分布すると考えられて命名され
  たもので、箱根火山の内輪山噴火による降灰が、水中で風化したものと考えられている。
 ○龍ケ崎砂礫層 龍ケ崎砂礫層は赤褐色の砂礫、及び粘土で構成されている。下の成田層上部の砂より粗砂
  で、斜交層理が発達している。龍ケ崎砂礫層は、成田層上部を堆積させた海がしだいに退くとき、河川の
  氾濫原に堆積したものと考察される。
 ○成田層 ミンデル・リス間氷期の海進による古東京湾に堆積した地層の上部で、下部に貝化石を含む化石
  床がある。
   この地層までが水海道市での露頭で観察できるものであり、一五万年~六万年前の小海進時の堆積層と
  考えられる。
   この層の化石床の貝化石は、原色こそ失われているが、デパートや海岸のお土産店で売っている貝の標
  本のように新鮮であり、現生の貝類である。
 
 次に、玉台化石床の貝化石リストを挙げてみる。
 化石床に含まれる種類は一〇〇余種に及んでいるが、これを種目別にみると、バカガイは約九〇パーセント以上を占め、本化石床の卓越種と認められるが、特徴種・同伴種はなく、他は偶然種でバカガイに特徴づけられる化石床である。生息深度を現生種の生息深度によって分類してみると、潮間帯が四〇パーセント、潮線下一〇~三〇メートルが二七パーセントで、生息深度からみると特徴種とみられ、二〇~六〇メートルの一四パーセントは同伴種とみることができる。他の偶然種をみても、生息深度の上限は五〇メートルである。
 
玉台橋貝化石・豊水橋床下流貝化石リスト
深度 N0 潮間帯分布型
(N) N1 30m以浅(例)
N2 30~60m35°>…北緯35°以南
N3 60~120m42°<…北緯42°以北
N4 100m以深
貝化石名深度分布型玉台水海道貝化石名深度分布型玉台水海道
 コハクダマN129°>  単板綱    
ヤツシロガイ科ニシキウズガイ科
 ヤツシロガイN1-2 アコヤエビスN4
 ミヤシロガイN1-2 イボキサゴN0
 新腹足目 ダンベイキサゴN0
エゾバイ科 キサゴN0
 コトクサザイN2-442°>カツラガイ科
 エゾボラN1-442°< カツラガイN1
 ヒメエゾボラN4カリバサガイ科
 モスソガイN1-2 アワブネN0
 カラフトエゾボラN338°<ユキノガサガイ科
 ヒメエゾボラモドキN3-4 ウノアシN0
 エゾボラモドキN3-4オニノツノガイ科
アクキガイ科 カニモリガイN1
 アカニシN0-138°<スズメガイ科
 ヒレガイN134°> エゾチドリN143°>
 シキシマヨウラクN2-3ウミニナ科
 ヨウラクヒレガイN3 カウアイN0
 ケショウサラサバイ科
  ツノオリイガイN438°< サンショウガイN0
タモトガイ科 腹足綱
 ムシエビN135°> 前さい亜綱
 ムギガイN1-2 原始腹足目
 スカシガイ科
イトマキボラ科 ヒラスカシガイN0-1
 ヒメイトマキボラN1-2 中腹足目
 ナガニシN1-2タマガイ科
 コナガニシN0 トラダマN1-235°>
テングニシ科 ツメタガイN1
 テングニシN1-2 ネコガイN1
ナミマガシワ科コロモガイ科
 ナミマガシワN0 コロモガイN1-2
イタボガキ科フデガイ科
 イタボガキN1 イトマキフデN135°>
 マガキN0オリイレヨフバイ科
 オハグロガキN033°> ヒメムシロN0
 ベッコウガキN2-4マクラガイ科
 スミノエガキN134°> ムシボタルガイN0
フネガイ科クダマキガイ科
 ヤサガタミミエガイN029°> モミジボラN1-2
 サルボウN0-1 異腹足目
 ハイガイN0-133°>イトカケガイ科
 ヒメエガイN0 オダマキN1
イタヤガイ科 後さい亜綱
 イタヤガイN1-2 頭じん目
 アズマニシキガイN0-1キジビキガイ科
イガイ科 コシイノミガイN1
 ホトトギスガイN0-1 オオシイノミガイN1
オオシラスナガイ科トウガタガイ科
 オリイレシラスナガイN2-4 ヒメゴウナN1
ネズミノテガイ科 タケノコクチキレN133°>
 カスリイシガキモドキN0スイフガイ科
 ほんえら亜綱 クダタマガイN1-3
 古異歯目 掘足綱
マテガイ科ゾウゲツノガイ科
 オオテマガイN1 キタノツノガイN1-3
 マテガイN0 斧足綱
 エゾマテガイN1 糸えら亜綱
ザルガイ科 真多歯目
 トリガイN1タマキガイ科
 異歯目 ベンケイガイN1
マルスダレガイ科 タマキガイN1
 ハマグリN0-1ミノガイ科
 カノコアサリN1 ハネガイN0-233°>
 ヒメアサリN0 ユキミノガイN1
 マツヤマワスレガイN0-1 フクレユキミノガイN1-2
 オニアサリN0 オオユキミノガイN0-129°>
ツノガイ科 ウチムラサキN0-2
 カブラツキガイN126°> アサリN0-1
トマヤガイ科 スダレガイN1
 フミガイN1-2 カガミガイN1
クチベニガイ科 オオシジミN0
 コダキガイN1-4バカガイ科
イワホリガイ科 バカガイN0
 シオツガイN1 ミルクイN1
ナミノコガイ科 ヒメバカガイN1
 アケボノキヌタガイN1 ホクロガイN1-2
 節足動物コフジガイ科
 甲殻綱 コフジガイN1-234°>
 サラサフジツボN1 コハクノツユガイN1-2
 オオアカフジツボN0フルイガイ科
 カニの一種の足 シラトリガイモドキN0
 棘皮動物キクサルガイ科
 うに綱 ヒトエギクN1
 ヨツアナカシパンN1-2ザルガイ科
 バフンウニN0 ザルガイN1
 ムラサキウニのとげN1 オオイシカケガイN0
キヌタアゲマキガイ科
 キヌタアゲマキN143°<


 
 現地性と推定されるミルクイ、ウチムラサキは、化石床上部の層であるが、潮線下(一〇~三〇メートル)に生息し、下部層に多く産出する現地性と思われるイタボガキは、潮間帯に生息している。
 これからみると化石床上部と下部では、深度の変化が考えられるが、全体としては、五〇メートル以浅の海であったと推定される。
 生息分布から見ると、北海道、本州以南に現生しているものが八〇・六パーセントを占め、卓越種であることがわかる。これに比して本州・東北以北が五・六パーセントの偶然種、本州南部以南生息が二三・二パーセントと同伴種の位置を占めている。
 このことから暖流の影響の強い海であることが考えられるが、一方、寒流の影響もあったことがうかがえる。
 水海道市豊岡町高砂製紙工場での深井戸資料をもとに柱状図を作り後掲する。
 

水海道市内深井戸記録からの柱状図

 この地点は、関東ローム層に覆われた洪積層の台地である。
 表土があり、その下に白粘土、赤砂の互層、貝化石を含む層が一五メートルの深さにあり、褐色シルト、青砂の互層、青砂の厚い一〇メートルに及ぶ層、そして中礫を含む層、青砂の互層、砂層、青砂の互層を繰り返して粗砂から青砂の細砂に変わり、その下に二五メートル以上の貝化石を含む砂層となっている。
 この柱状図を上層から見ると火山灰堆積による関東ローム層、赤砂の互層にみられる河性堆積物、一六メートル以下の貝化石層から褐色砂・青砂・中礫層・青粗砂・青細砂・貝化石層に至る深井戸最深部の調査資料だけでも八〇メートルを越す海成層から成り立っていることがわかる。
 次に沖積低地についても深井戸資料から見てみたい。水海道市小山戸町のものを例にとると、次のようになる。
 この地層の特徴は一五メートル附近に一・五メートルの腐植層を挾み、また八五メートル~九二メートルに再び厚い腐植層が挾まれている。この腐植層の成因については、石炭や泥炭の形成過程と同じように陸に近い水域、また陸上の湿地などに植物の集積と急速な埋積が行われたと考えられる。
 なお、五二~六〇メートル、そして一七七~一八八メートルに礫層が発達している。この二〇〇メートルに及ぶ層は、泥、砂、礫という堆積サイクルを繰り返している。
 また、この地層に含まれている腐植層も上下の層から内湾性の小型有孔虫が出現するので、同じような水域でやや浅くなり、陸地から運ばれた植物が停滞水域で泥炭化するような環境があったと思われる。こうみていくと、この地層も上部の河川堆積物をのぞき、大半は海成層からなっている。