植生

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市のほぼ中央を流れる鬼怒川によって、市は、東西の両地帯に分けられる。
西側地帯には台地が多く、鬼怒・小貝の両川にはさまれた東側地帯は、鬼怒川沿いの一部を除いて、大部分が低地である。
 西側地帯の台地には林が多く見られるが、東側地帯は約半分が市街に占められ、林は台地の一部と、鬼怒・小貝両川の岸沿いと小貝川河原に点在するに過ぎない。
 林は、コナラ・クヌギを主とした落葉広葉樹林―雑木林―と、アカマツを主とした針葉樹林―松林―で、大方は二次林である。
 なお、西側地帯南部の人家周辺には、モウソウチクの林が比較的多く見られる。
 西側地帯の大方の林には、モミ・スギ・ヒノキ・サワラ・ネズなどの針葉樹、イヌシデ・クリ・エノキ・コブシ・ヤマザクラ・ウワミズザクラ・ハリギリ・エゴノキなどの落葉広葉樹の高木が、少数混生しているのが見られ、所によっては、イヌザクラ・アオハダ・ヤマハンノキ・ニガキなどの高木も見られる。
 亜高木には、常緑広葉樹のシロダモが多く、低木には、ヤマツツジ・レンゲツツジ・ナツハゼなどツツジ科の植物やヤマコウバシ・クサボケ、常緑広葉樹のヒサカキ・ヤブコウジが、所によってはシラカシの幼木が多く見られ、また蔓植物のノダフジ・アケビなども多く見られる。
 

植生模式図(常総橋付近 小貝川河原)

 草本には、フタリシズカ・フシグロセンノウ・イチヤクソウ・ウメガサソウ・リンドウ・キキョウ・シラヤマギク・コウヤボウキ・センボンヤリ・ヤマユリ・チゴユリ・ホウチャクソウ・ヤブラン・ギンラン・エビネ・シュンランその他が見られるが、最近、大方の林にアズマネザサが繁殖して、草本類特に小型草本類は著しくその数が減りつつある。
 なお、東側地帯の林には、ヤマザクラ・ツツジ類は見られない。
 一般の林の縁には、ウシコロシ・モミジイチゴ・ノイバラ・テリハノイバラ・ヤマハギ・アカメガシワ・ヌルデ・ゴンズイ・アキグミ・タラノキ・ムラサキシキブ・ニワトコ・ガマズミ、それに蔓植物のエビヅル・クズ・スイカズラ・センニンソウなどが、マント群落を作っているのが見られる。
 当地方の原植生を示すものとして、小規模ながら注目すべき常緑広葉樹林―照葉樹林―が、西側地帯の菅原天満宮境内の西向き斜面に見られる。
 イタジイ・アラカシ・ツバキ・モチノキ・蔓性のテイカカズラ・サネカズラ、低木のマンリョウなどの照葉樹が斜面を被い、林床には、それらの幼木も見られる。
 

植生模式図 (菅原天神 スダジイ・アラカシ林)

 鬼怒川の東岸、市街の北には砂丘があり、そこにはドクウツギが見られるが極めて少なくなり、絶滅に瀕している。
 鬼怒川には砂州が多く、そこには、ツルヨシ・コウボウシバなどが見られるが、砂州の低所には泥土が堆積して、ヤナギ類が群れ立っている。なお、東側堤防の斜面や裾には、ハマエンドウが少数ながら見られる。
 小貝川には、河原草原が発達し、その低湿地にはヨシが、それ以外の所にはオギが群落を拡げ、それに囲まれて、クヌギ・ハンノキを主とした林が点在し、林側には、多くのイボタノキと市の他地域にはないゴマギが見られる。また、草原の所どころに、アカメヤナギ・コリヤナギなどのヤナギ類が群れ、あるいは個々に立っているのが見られる。
 

植生模式図 (吹上山・鬼怒川河原)

 オギ群落の周辺には、ノウルシの群落やアマナ・マイヅルテンナンショウ・ジロボウエンゴサク・フジバカマなどが見られ、ヨシ群落の中や周辺には、タチスミレ・シムラニンジン・エキサイゼリなどが見られ、草原の一か所小高くなった所には、ヒメアマナが見られる。
 最近、この河原のところどころに、セイタカアワダチソウが根を下ろし、その群落の範囲を拡げつつある。
 市の西側地帯の南部、岩井市との間にある菅生沼には、オギ・ヨシ・マコモ・カサスゲ・ガマと、順に周囲の陸地から水面へ向かって群落を作っているのが見られ、水面には、ヒシ・アサザ・ガガブタ・トチカガミなどが、水中には、マツモ・エビモ・ガシャモクその他が見られるが、最近、これらの水生植物特に沈水植物は著しく減っている。
 市街を離れた農家の屋敷には、ケヤキ・エノキ・シラカシ・スギなどの立ち並ぶ高木が目立つが、これらはおおかた防風のために植えられたものである。また、小貝川に沿った人家の周囲には、サンゴジュの生垣が目立つ。
 市内の著名な巨木には、イチョウ・カヤ・スギ・アカメヤナギ・ケヤキ・ムクノキ・タブノキなどがあるが、その大部分は社寺の境内にある。なお、クロマツの巨木も二、三あったが、最近になっていずれも枯死し、寺の参道で年を経た並木となって人の眼を惹いていたクロマツもそのほとんどが枯死した。
 以上、市内の植物の概要を記したが、記録によると、当市内の植物(羊歯植物以下を除いた主に野外植物)は、裸子植物が七科一〇余種、被子植物の双子葉類が九二科四〇〇余種、単子葉類が一八科約二〇〇種、計一一七科約六〇〇余種、その中、帰化植物は約九〇種、しかもその種類数はしだいにふえている。