哺乳類は、記録によると、八科一六種、この中、中型哺乳類はキツネ・タヌキ・アナグマ・イタチ・ノウサギの五種で、キツネ・タヌキは記録にあるが、現在も生息するか否かは不明であり、アナグマも著しく減り、イタチも以前よりは、かなり減って、しかもその中には、チョウセンイタチが多いという。ノウサギは現在も各所で目撃あるいは捕獲されている。
小型哺乳類中、コウモリ類も著しく減り、最近では、キクガシラコウモリ・アブラコウモリが、主に鬼怒川の西側地帯の社寺林などで目撃されるに過ぎない。ネズミ類は、ハツカネズミ・ドブネズミ・クマネズミなど人里に棲む種は、依然多いが、主に林野に棲むものは、アカネズミを除いて、ハタネズミ・カヤネズミ・ヒメネズミなど極めて減り、この中には、現在も生息するか否か不明のものもある。
哺乳類は以上の他に、アズマモグラが普通に、ホンシュウジネズミが少数目撃される。
水海道地方の小哺乳動物 |
科 目 | 種 | 備 考 |
A.食虫目 | ||
トガリネズミ科 | ホンシュウ・ジネズミ | 三重県以北から青森県まで分布、 吻の尖った日本特産種 |
モグラ科 | アズマモグラ | 耕地・原野・ゴルフ場に多い |
B.翼手目 | ||
キクガシラコウモリ科 | キクガシラコウモリ? | 日本に生息するもので最大※ |
ヒナコウモリ科 | アブラコウモリ | (イエコウモリ) 激減 |
C.ウサギ目 | ||
ウサギ科 | ノウサギ | 雑木林 山地 耕地の周辺・沼・川畔にみられる |
D.ゲッ歯目 | ||
ネズミ科 | ハタネズミ? | 山野及び田畑に孔道をつくる※ |
ヒメネズミ? | ※ | |
アカネズミ | 疎林原野に多い | |
カヤネズミ? | 灌木林草原に生息 ※ | |
ハツカネズミ | 耕地 竹林 人家にみる | |
クマネズミ | 家ネズミの一種 | |
ドブネズミ | 人家 市街地の排水溝 飲食店付近に多い | |
E.食肉目 | ||
イヌ科 | ホンドタヌキ? | 捕獲の記録は古い ※ |
ホンドキツネ? | 〃 〃 | |
イタチ科 | コウライイタチ | |
アナグマ |
※=再確認の必要あり |
鳥類は、留鳥・旅鳥・渡り鳥・漂鳥などすべて合わせて三五科約一四〇種が記録されているが、その中スズメ・ムクドリ・ヒヨドリ・オナガ・ハシブトガラス・ハシボソガラス・ホオジロ・シジュウカラ・ヒバリ・カワラヒワ・モズなどは各所に多く見られ、また夏の河原草原などには、セッカやオオヨシキリが、冬の田圃には、ツグミ・タヒバリなどが多く見られる。
当地に稀なものとしては、キバシリ・センダイムシクイ・トラツグミ・ホトトギス・ツツドリ・イスカ・イワツバメなどがあり、カワセミは一時姿を消したが、最近また各所の水辺にときおり見られるようになった。また、ごく最近、国の天然記念物に指定されているシラコバトが二、三か所で目撃され、鬼怒川の西側地帯でその営巣も確認された。
市の西、岩井市との境にある菅生沼は県の鳥獣保護区・緑地環境保全地区に指定されているが、ここには冬季飛来するガンカモ科を中心に、季節・季節に各種の水鳥が見られる。
ここに飛来するガンカモ科は約二〇種が記録されているが、この中、多いのはハシビロガモ・オカヨシガモ・ヒドリガモ・コガモ・オナガガモ・キンクロハジロそれにカルガモなど、また、オオハクチョウ・コハクチョウ・マガンなども少数ながらその姿が見られる。ガンカモ科の他に、シギ科一〇余種、サギ科数種、チドリ科・クイナ科・カモメ科各四~五種が記録されている。
沼を囲んで林も比較的多く存在するので、水鳥以外の鳥類も多く見られる。ワシタカ科のトビ・サシバ・オオタカ・ノスリなどや、フクロウ科のコノハズク・オオコノハズク・アオバズク・トラフズクなど、中型の鳥類もこの沼の周辺や沼の北東部の林などで目撃される。
魚類は、鬼怒・小貝の二川と菅生沼があるので、魚相は比較的豊かであり一八科約五〇種が記録されている。この中には、かつては当市水域には見られなかったハス・ワタカなどの国内の他水域のものや、ソウギョ・ハクレン・コクレン・タイリクバラタナゴ・ブルーギルなどの外国産のものもある。メダカ・ニゴイ・オイカワ・ゲンゴロウブナ・コイ・ハス・ナマズ・ツチフキなどは、いずれの水域にも普通に見られ、アユ・ボラ・ニゴイなどは、鬼怒・小貝の二川にのみ多く見られる。鬼怒川にはごくまれにスナヤツメが見られ、また、春にはサクラマスが、秋にはサケが今も昔と変わらず海から遡上してくる。
水海道市を中心とした小貝川・鬼怒川・菅生沼水系の淡水魚 |
場所(水系) 科名・種名 | 小 貝 川 水 系 A | 鬼 怒 川 水 系 B | 菅 生 沼 水 系 C | 備 考 +少ない,⊕⊕多い。 ?印 再確認必要のもの |
ヤツメウナギ科 | ||||
スナヤツメ | + | ごく稀 減少 | ||
サケ科 | ||||
サケ | ⊕ | 漁獲禁止 昔は秋の風物詩,数も減 | ||
サクラマス | + | 8~10月ごろそ上(ヤマメはこの陸封型)ごく稀 減少 | ||
アユ科 | ||||
アユ | ⊕ | 多⊕⊕ | 昭和47年に鬼怒川にそ上(大量)岩石の珪藻類が主食 | |
キュウリウオ科 | ||||
ワカサギ | + | + | + | 昭和45年(小貝川鬼怒川両水系)にも採集記録あり |
シラウオ科 | ||||
シラウオ? | ⊕ | 昭和47年に採集記録 | ||
メダカ科 | ||||
メダカ | ⊕ | ⊕ | + | ヒメダカはメダカの変異型 |
ナマズ科 | ||||
マナマズ | ⊕ | ⊕ | + | 鬼怒川では減少 |
ギギ科 | ||||
キバチ | + | + | + | ギンギョバチという。背びれに固いとげがある。減少 |
コイ科―カマツカ亜科 | ||||
ヒガイ | + | + | + | 1918年 関東に放流 美味 減少 |
モツゴ | ⊕ | ⊕ | + | タモロコと混生 泥場に多い |
カマツカ | + | + | + | 減少 |
ニゴイ | ⊕ | ⊕ | (サイ)(セイ)とよぶ産卵(4~6月) | |
ズガナニゴイ | + | + | + | 個体数多くない 半底生活 減少 |
タモロコ | ⊕ | ⊕ | + | (クチボソ)とよぶ 美味 |
コイ科―ウガイ亜科 | ||||
ウグイ | ⊕ | 多⊕⊕ | + | (ハラアカ・ハラカ)(アイソ)とよぶ 婚姻色は鮮やか |
マルタウグイ | ⊕ | 多⊕⊕ | + | (マルタ)とよぶ |
オイカワ | ⊕ | ⊕ | + | (ヤマベ)とよぶ |
ハス | ⊕ | 多⊕⊕ | + | びわ湖淀川水系原産 減少 |
ワタカ | ⊕ | 多⊕⊕ | + | びわ湖淀川水系原産 下流域に生息 |
ソウギョ | ⊕ | 原産(中国 ラオス ベトナム)水草を食べる,大きい | ||
コクレン | + | (レンギョ)とよぶ 中 | ||
ハクレン | + | 中国原産(1943年以降移植) | ||
コイ科―コイ亜科 | ||||
コイ | ⊕ | ⊕ | + | |
キンブナ | + | +? | + | 鬼怒川(稀) |
ゲンゴロウブナ | ⊕ | ⊕ | + | (ヘラブナ) 多い |
ギンブナ | ⊕ | ⊕ | + | (フナ)とよぶ 多い |
(コイ科)その他 | ||||
ツチフキ? | + | + | + | |
ホンモロコ? | + | + | ||
ムギツク? | + | + | ||
ゼセラ? | + | + | + | |
タイリクバラタナゴ | ⊕ | ⊕ | + | 中国・朝鮮原産 雄は美しい |
マルタ | + | + | ||
ドジョウ科 | ||||
ドジョウ | ⊕ | ⊕ | + | 泥底化のため増加 |
シマドジョウ | + | 少なくなっている 砂底に生息 | ||
ウナギ科 | ||||
ウナギ | ⊕ | ⊕ | + | 大型のものも生息 |
サヨリ科 | ||||
クルメサヨリ | ⊕ | 極めて少ない 昭和45年にも採集の記録あり | ||
ボラ科 | ||||
ボラ | ⊕ | 多⊕⊕ | ハク(5cm)スバシリ(5~10cm)イナ(20cm) | |
カルムチー科 | (タイドジョウ科) | |||
カルムチー | ⊕ | ⊕ | + | (ライギョ)とよぶ 昭和10年(増殖) 上流域ではみえない |
スズキ科 | ||||
スズキ | + | + | + | 出世魚 セイゴ(1年) フッコ(2年) スズキ(3年) 減少 |
カジカ科 | ||||
カジカ? | + | + | + | |
クモハゼ科 | ||||
ウキゴリ | + | + | + | 泥底に生息 減少 |
チチブ | + | + | + | (ダボハゼ ダボ)とよぶ 減少 |
マハゼ | + | + | + | |
ゴクラクハゼ? | + | + | ||
バス科 | ||||
ブルーギル | + | (ブルーギル サンフイッシュ) |
昭和54.8.9(はじめて採集) 1960(シカゴより天然水域として最初伊豆半島一碧湖に放流 関東・関西・四国の池沼に分布) |
参考文献 |
○岩井市及び近郊における動植物調査報告(自然友の会)1972 |
○水海道市を中心とした鬼怒川・小貝川水系産の淡水魚(増田一也)1975 |
○その他 |
昆虫類をみると、最近市内で確認された蝶は八科五二種、この中ムラサキシジミ・オオミドリシジミ・ヒオドシチョウ・アサギマダラ・モンキアゲハなどは、市内ではまれに見られる種である。かつて、市内の各所で見られた国蝶のオオムラサキは最近見られず、また、一時小貝川の河原に出現したウスバシロチョウも、姿を消して久しく、今は当市より下流の某地に見られるのみとなった。
一時減ったセミ類も、最近再びその数を増したが、ハルゼミは、松林の減少からその数が著しく減って初夏の松林にその鳴き声はまれとなった。
直翅類の『鳴く虫』では、スズムシ・マツムシなど古くから親しまれてきたものの他に、かつては当地方に見られなかったカンタンが、最近は各所のススキ原などで、その鳴き声が聞かれるようになり、一時聞かれなくなった帰化種のアオマツムシが、二、三年前から再び人里の立木で聞かれるようになった。
夏の夜の景物のホタル―ヘイケボタル―も、各所の水辺に再び見られるようになり、所によっては、多数が飛び交うほどに殖えた。
大型の水棲昆虫ゲンゴロウ・タガメなどは姿を消して、ミズカマキリやタイコウチがわずかに見られる程度、トンボ類は、特に菅生沼周辺に多く、ここには分布上注目すべきオオモノサシトンボ・マイコアカネなどが見られる。
菅生沼といえば、かつて大型のカラスガイを多産したが、現在は少なく、また、ここには幾種かのタンスイカイメンが多く見られる。
当市の動物中、特記すべきものに、地下水に棲むプラナリアのカントウイドウズムシがある。二〇数年前、豊岡町の一掘抜井戸から発見されたもので、日本では、七〇数年ぶりのもので今もその井戸に生息する。
参考文献
(地形・地質)
茨城県における第四紀地質について 茨城県教育研修センター(一九六七)
水海道・牛久沼周辺の第四紀化石群について 茨城県教育研修センター(一九七四)
茨城県地学ガイド コロナ社(一九七七)
茨城の地質をめぐって 築地書館(一九七九)
茨城県大百科事典 茨城新聞社(一九八一)
茨城県郷土研究 茨城大学教育研究所(一九五三)
東京の自然史 貝塚爽平 紀伊国屋書店(一九六四)
関東ローム層の問題 戸谷洋 大明堂(一九六〇)
(植生・動物相)
昭和四七年度特別地域自然財分布調査報告書 茨城県高等学校教育研究会生物部(一九七三)
昭和四七年度茨城県自然保護必要地域分布図 茨城県高等学校教育研究会生物部(一九七三)
岩井市およびその近郊における動植物調査報告 自然友の会(一九七二)
茨城県の自然 暁印書房 五木田悦郎、後藤直和 野原幸之助、山崎睦男 共著(一九七七)
LARVA 水海道第一高等学校生物部(一九七七)
小貝川・鬼怒川・菅生沼その変遷と動物及び植物 水海道市教育委員会(一九七九)
水海道市の植物目録 水海道市教育委員会(一九七七)
吹上山・小貝川河原・菅原天神・菅生城址の植物目録 水海道市教育委員会(一九七八)
茨城の生物 第二集 茨城県高等学校教育研究会生物部(一九八一)