蕉雨が好古を訪れたころ既に好古も北総俳壇では岡田郡馬場村の秋葉素盟、筑波郡真瀬村の飯田滄水らとともに一方の雄としてその名が知られていた。蕉雨は北総に足をとどめることしばし、その間しばしば句会を催し句友をつくり、特に好古のために句集を選し、俳壇のため多くの功績をのこして去った。
ここに幾冊かの句集がある。そのうちから水海道の人が詠んだ句を若干挙げることしよう。
卯の花や笠借りによる蜑(あま)が宿 | 猪瀬好古 |
戸を横にしてもおかれず今日の月 | 山崎分賞 |
こき空の水にうつりてあきのくる | 石塚曙葎 |
蓮提(さ)げてたたくや常に明かぬ木戸 | 滝川鶯橋 |
虫の音に船を戻せば止みにけり | 宮本赤岳 |