大生村耕地整理組合とその事業

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水海道市の鬼怒川と小貝川に挟まれた沖積土地帯には、旧三妻、五箇、大生、水海道の四町村があった。三妻村と水海道町は鬼怒左岸の自然堤防の上にかなり古い時代から集落が出来たものであったが、小貝川の自然堤防の上につくられた五箇村と大生村はともに近世初期に出来た新田集落から成り立っていた。
 三妻、五箇、大生に続く水田地帯の中央には、寛永年間、代官伊奈氏によって掘られた八間堀川が流れて幹線排水路となっている。この外用排水兼用の千代田堀、百聞堀などがある。
 この地帯では用水の確保も重要であったが、とくに下流にあたる大生村の一帯は、排水問題にはつねに悩まされてきた。というのは、鬼怒川に排水している八間堀では、大水によって鬼怒川の水位が高くなり、排水口からの放出が不可能になるまで上昇すると、必然的に逆流して一帯にあふれ出すという、いわば水害の常襲地帯となっていたからであった。
 大生村には村の南端を東西に流れる干堀もあり、箕輪、長助、新井木の三地点から小貝川に取り付けた排水路も堀られていたが、この機能も充分活かされない状態にあった。
 このように排水問題で苦しめられてきた大生村では、耕地整理事業に着手することになり、県の指導の下に計画が練られた。この計画の発起人になったのは当時の村長杉山泰助をはじめとする一〇名で、そのほとんどが村内の上層部であった。発起人会には県の嘱託技師で結城郡農会の副会長もつとめる飯泉桂一郎が参加し、工事設計や資金導入などの、様々な指導を行った。
 県に対して認可申請をする段になって、組合費負担をめぐって比較的被害の少ない地区(十花)と他の地区が対立するような場面もあったが、飯泉の斡旋で和解し、つぎの四項目の契約をかわした。一、新井木に排水機を新設する、二、排水機設置を初年度に実施し、八間堀の築堤浚渫、新しい幹線排水路を掘さくする、三、排水機に係る費用負担区分、四、以上の事業を早期に達成する、というものであった。そして同年一二月二八日、設立認可され、翌年から工事に着工する運びとなった。
 組合に加入したのは十花、大崎、箕輪、兵右衛門新田、長助新田、新井木、平右衛門新田の七地区で、中山地区は独自の耕地整理事業の計画があり、これには参加しなかった。地区の総面積は四二八町余(第二二表参照)、初代組合長には村長杉山泰助(箕輪)が選出され、副組合長には村内第一の大地主山口豊作(十花)が選任された。
 
第22表 耕地整理面積
地 目面 積地 価
190.973,380
157.317,755
宅 地38.328,660
山 林0.915
原 野5.935
畦 畔5.2
398.7119,847
道 路17.2
溝 渠8.3
堤 塘4.3
29.9
合 計428.6119,847
註)「耕地整理関係書類」による。ただし,面積は反以下切り捨て,地価は円以下を切り捨てた。


 
 大生村耕地整理事業においては、その組合規約によれば、事業として土地の交換、分合、開墾、地目変換、区画形質の変更、道路、橋梁、堤塘、畦畔、溝渠の変更、廃置、灌漑、排水に関する設備を実施することになった。
 この中で基本になった工事は、新井木地区にコンクリート排水口を新設し、自然排水が不可能な時は、ポンプ排水をする、そのための機場を新設し、口径二八インチの排水機二台と、蒸気エンジンを設置することであった。そして、八間堀の土堤を高位に修築し、川底の浚渫を行う、第三に大崎を迂回して箕輪に至る排水路を新設して小貝川に放流する、このような排水設備を整えた上で、対象地となった水田には約一〇メートルの間隔で小排水路を設け、その南端で干堀排水路に流れ込むようにするという内容であった。
 この排水事業については、労働条件の整備、生産力の増大を図るための農道の完備があった。十花―平右衛門新田―長助新田を結ぶ幹線道路の幅員を五・四メートルに、五箇村に通ずる道路を三・六メートルにそれぞれ拡張、改修を加える、また耕地整理地区内主要道路を二・七メートルにし、耕作道路を二メートルにして新設する等の工事を行った。
 そして農作業の条件を整備した上で、一枚一反(一〇アール)の区画整理、暗渠排水工事と水田乾田化が図られた。初期の工事に伴う費用は第二三表のように見込まれた。しかし実際に工事が完了をみるのは昭和六年であり、それ迄には更に多くの資金が投入された。
 
第23表 工事内容
工   事   名予算額
 1 道路築造費5,494
 2 旧道取崩費1,280
 3 堤塘上置工事1,189
 4 用水路掘さく費401
 5 排水路掘さく費5,817
 6 旧水路埋立費1,068
 7 用水路溝畔築造費817
 8 排水路  〃853
 9 鉄骨コンクリート桶門工事3,869
10 木造暗渠工事32か所653
11 土管伏設工事624
12 灌排用竹管伏込み工事148
13 竹柵工事730
合     計22,943
註)「設計書」による。円以下は切り捨て。設計書の工事費予算は22,950円となって,本表の合計額が少ないのは円以下切り捨てた合計をとったためである。