第38表 菁莪学館収支状況(大正11年) |
収 入 | 3,967円50銭 | 月謝・館費 |
支 出 (内訳) | 4,560円 | |
420円 | 借家料,畳修繕費 | |
180円 | 小使給,臨時雇人費 | |
180円 | 薪炭費 | |
100円 | 修学旅行費,諸式費 | |
60円 | 教授用消耗品費 | |
200円 | 図書購入費 | |
60円 | 雑費 | |
3,360円 | 館長,教員俸給 | |
差引不足 | 592円50銭 |
(「大正11年度私立菁莪学館経費予算」より作成) |
この資料は大正一一年三月、水海道町長宛に提出された「町費補助申請」の付属資料である。同校は設立以来、生徒入学募集について町に依頼してきたが、この年は生徒募集の依頼(二月)に加えて、経費予算を示して収入不足額五九二円余のうち、一二〇円の補助を申請したのであった。資料によれば生徒からの月謝(授業料)、館費三九六七円余は、ようやく館長、教員の俸給分三三六〇円を支払って六〇〇円余る程度である。従って同校運営に必要な諸経費を見積れば五九二円余の不足を生ずるというものであった。一二〇円の補助を受けてもなお不足の分は「他に補充の途相講」ずるとしており郡費の補助も予定されている。この年水海道町からどのような補助がなされたか不明だが、前に引用した概況表では同年における授業料収入は四三六四円と予算額を大きく上廻り、その他の収入は八一〇円となっているから、何等かの補助があったことは想像できる。
同校はこうした状態にあったが、翌大正一二年には、さらに大きな変化がもたらされた。それは、前述した組合立御城実科高女の県立移管が実現し、校舎も橋本町に移転したのに伴い、従来の実科高女の跡に菁莪学館がはいることになったからである。これによって同校は寺の境内の小さな建物から、ようやく学校らしい校舎に移ることが出来た。従って経理面ではこの年臨時費一五〇〇円を支出した。
さらにこの年には水海道銀行が常磐銀行に合併になり、水海道銀行の重役であった鈴木吉太郎以下八名が、同校に一五〇〇円を設備金として寄付している。この設備資金は同校が、旧実科高女跡に移るに伴って、土地、建物等の権利関係の異動或いは修繕に要したものであったと思われるが、町内有力者が同校の存続を支持し、多額の資金援助をしていたのであった。
同校の運営資金問題に関しては、翌大正一三年九月、社団法人菁莪学館維持会が設立され、会員を募り、定期的な資金援助の途を講じようとした。開校以来既に数か年を経過し、卒業生を中心とした同校関係者もふえていき、また町内有力者なども支援するという基盤もあったから、有効な組織に発展する可能性があった。大正一二年一一月現在における、町、村別在校生及び卒業生数は第三九表のとおりであった。在校生、卒業生ともに、結城郡の占める割合が高く、中でも組合立の高等小学校をもった範囲(現在の市域)の町、村が多かった。しかし筑波郡の南部一四か町村、北相馬郡の北部八か町村も増加しつつあり、隣接する猿島郡東部地域からもふえている。これは同校の教育方針が修業年限三か年で、しかもその内容において実業学校よりも旧制中学校に近かったから、次第に人気が上ってきた。同校はのちに菁莪農商学校となり、農業科、商業科を選択することに変わったが、水海道中学校の卒業生がその後進路を県外や公務員等に求める傾向が強かったのに反し、地元に根をはって活躍する人物が多かった。結果として地元に奉仕する人間養成を、私立学校が担うことになった。
なお、同校は戦時下にとられた私学統制令で廃校になったが、その卒業生数は二〇〇〇人以上におよんだ。
第39表 菁莪学館在校生・卒業生出身地別 (大正12年) |
郡・町村名 | 現在 生徒数 | 卒業 生徒数 |
結城郡水海道町 | 24 | 8 |
豊岡村 | 8 | 6 |
菅原村 | 9 | 6 |
大花羽村 | 6 | 3 |
大生村 | 14 | 11 |
五箇村 | 10 | 9 |
三妻村 | 11 | 9 |
(小計) | (82) | (52) |
石下町 | 13 | 0 |
玉村 | 1 | 0 |
蚕飼村 | 2 | 0 |
飯沼村 | 5 | 2 |
岡田村 | 1 | 2 |
豊田村 | 0 | 1 |
同郡計 | 104 | 57 |
筑波郡鹿島村 | 10 | 5 |
十和村 | 5 | 1 |
長崎村 | 4 | 2 |
豊村 | 1 | 1 |
小張村 | 1 | 1 |
福岡村 | 2 | 2 |
谷田部町 | 3 | 0 |
島名村 | 5 | 1 |
上郷村 | 7 | 0 |
葛城村 | 2 | 0 |
真瀬村 | 3 | 2 |
板橋村 | 1 | 0 |
三島村 | 0 | 1 |
沼村 | 0 | 1 |
同郡計 | 44 | 107 |
北相馬郡小絹村 | 6 | 7 |
大井沢村 | 5 | 7 |
大野村 | 4 | 2 |
守谷町 | 4 | 1 |
高野村 | 0 | 4 |
内守谷村 | 6 | 5 |
坂手村 | 9 | 4 |
菅生村 | 6 | 3 |
同郡計 | 40 | 33 |
猿島郡神大実村 | 9 | 8 |
七郷村 | 0 | 2 |
中川村 | 1 | 0 |
岩井町 | 3 | 2 |
沓掛村 | 1 | 0 |
飯島村 | 2 | 2 |
弓馬田村 | 0 | 1 |
同郡計 | 16 | 15 |
真壁郡大村 | 1 | 0 |
千葉県二川村 | 0 | 1 |
合 計 | 205 | 123 |