こうした教育に対する国の要請や、地域の要求の変化をみるため、水海道小学校の「沿革誌」から、一例として大正八年における同校の動向をみておきたい(第四〇表)。
第40表 大正8年水海道小学校行事一覧 |
○1月8日(~3日間) | 本校児童成績品展覧会開会 |
○2月25日 | 父兄懇談会開会 |
○2月26日 | 大正8年度入学児童身体検査 |
○3月3日 | 李太王殿下国葬ニ付休業 |
○3月4日 | 休校全部新校ニ移転 |
○3月12日 | 本県女子師範訓導浜口氏沢畠郡視学来校 |
○3月24日 | 体操指導員宮田覚三氏来校 |
○ 同 日 | 秋山藤左衛門氏ヨリ具足ノ寄贈 |
○3月25日 | 卒業証書授与式挙行 |
○4月1日 | 入学式挙行 |
○5月7日 | 皇太子殿下御成年式ヲ挙行 |
○ 同 日 | 御真影ヲ旧校舎ヨリ奉還ス |
○6月5日 | 校舎(216坪余)ノ三階建改築工事認可セラル |
○6月20日 | 女子師範校生15名訓導湯沢氏引率来校 |
○7月1日 | 世界平和克復祝賀式挙行後旗行列ヲ行フ |
○8月13日 | 男子同窓会 14日女子同窓会開会 |
○9月15日 | 八幡社 25日天神社例祭ニ付参拝 |
○10月22日 | 高等男生鎌倉方面ニ修学旅行 |
○11月7日 | 沢畠郡視学来校 |
○11月8日 | 沢畠郡視学福元郡長来校 |
○11月13日 | 本校児童運動会開催 |
○11月17日 | 実業補習学校々則改正女子部設置,小学校ニ付設1件認可 |
○11月30日 | 本郡教育会総会ヲ開催,講師井上哲次郎,峰間信吉 |
○12月1日 | 沢畠郡視学,中沢郡書記来校 |
○12月2日 | 中沢郡書記来校 |
○12月8日 | 実業補習学校男子部 14日女子部授業開始 |
○12月10日 | 本県師範生12名訓導青木氏引率来校 |
第一次世界大戦によって、日本経済は思いがけない好況に転じ、農村部にも波及した。大正八年には戦争が終結し、七月には水海道でも「世界平和克復祝賀式」が行われ学校からも旗行列に参加した。
皇室関係行事や神社参拝、さらに郡視学の来校が学校の重要行事として度々みられたのは、戦前期には日常的であったが、そうした行事の間に、いくつかの新しい傾向がみられる。
同町においては、それ迄の校舎が次第に手狭まになり、また立地条件にも問題があり、明治四二年、九か月間の建設期間を経て、校舎の移転、新築が行われた。これは同町における教育熱の表われであったが、この頃から「全校児童学芸会」が、運動会に並ぶ年間行事となっていった。大正八年にはみられないが、この学芸会には父兄多数の参観があり活況を呈した。
児童が中心の行事としては、全校の綴方や書き方、裁縫の作品展覧会が行われ、時には郡単位や、「実業の日本社」主催の展覧会への出品などがみられた。また高等科の修学旅行や運動会は毎年行われた。
父兄懇談会なども行われ、郡教育会主催の講演会が開催され、家庭や教師の研修活動も重視されるようになった。
この様に明治末期から大正期にかけては、学校教育の充実、地域全体が教育に寄せる関心が高められていった。こうした中で、大正期の新しい文化的活動等も花開いてくる。