水海道信用購買組合の設立

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水海道町においては昭和三年一一月、産業組合法による、有限責任水海道信用購買組合が設立された。同組合の主な目的は、金融の便を図るとともに、貯金を奨励する信用業務と、産業や経済に必要な物品を購入し(一部はさらにこれを加工して)、これを組合員に販売する購買業務とを併せもつとされた。
 設立の中心になったのは農業倉庫の中心人物でもあった鈴木吉太郎と、植田利之助らであった。翌昭和四年当時の組合役員には、鈴木吉太郎(組合長)、秋山隆(専務理事)、植田利之助、青木常吉、野々村源四郎、梅沢貞吉、五木田文右衛門(以上理事)ら、町の有力商人が名前を連ねていた。
 組合員になったのは町内一一七人で、出資口数(一口二〇円)は六六三口、一万三二六〇円であった。それら組合員の内訳は第五六表のとおりで、この数字はその後数年間あまり動きのない固定的なものであった。組合員は商家が圧倒的に多く、「その他」がこれに続いて多い。「その他」の内容は明確でないが、町内の会社員、公務員、諸職人等々であったと考えられる。
 
第56表 水海道信用購買組合職業別組合員一覧
職 業組合員数出資口数
農 業337
工 業215
商 業73441
その他39170
合 計117663
註) 水海道市渕頭町鈴木家資料により作成


 
 事業内容は、当初は予定した金融信用業務はほとんど見られず、購買事業のみが行われた。その状態を「事業ノ概況」(第五七表)からみると、同組合における購買事業の概要を知ることが出来る。
 
第57表 同組合購買事業概況(昭和5年)
品 目購 入 量購  入  先販 売 量
 
水粳玄米
俵 斗 升
 564.3.4.
 
農業倉庫、生産者
俵 斗
543.3.
水糯玄米 17.      〃 16.  
木 炭1331.    広島、宮城、栃木、茨城967.  
石 炭 591.    産地、県購買組合連合会437.  
塩 鮭 26貫870匁 水海道釜初本店全部
数の子炭  6貫700匁 
石けん524個全購連組合369個
竹 箒前年繰越36本27本
万年筆15本東京鎗田重全部
インキ15個
註) 水海道市渕頭町鈴木家資料により作成


 
 米類のほかには、木炭、石炭、塩鮭、数の子、石けん、竹箒、万年筆、インキ等全部が日常的な生活物資を、各方面から仕入れ、販売した。また農民が少なく、肥料は農業倉庫で扱ったこともあり、町内の商業と競って伸びるには限界があった。
 昭和六年の恐慌時には、これらの売上げがさらに減少し、報告書には「昨年ニ比シ販売数ノ減ジタルハ不景気ノ結果ニ因ルハ勿論ナレトモ又一方ニハ当町組合員ハ組合ノ精神ハ知悉シ居ルモ取引上ノ関係其他種々ノ事情ニ圧迫セラレ為メニ本組合ハ不振ニ陥リ居ルモ役職員数ハ之レガ挽回策ヲ講ジツヽアリ」とのべて、不振の挽回を組合員の自覚の向上に求めていた。
 このほか水海道市域の各村には、様々な産業組合が存在したが、一部は明治期において触れたので割愛した。なお、常総線三妻駅には、三妻農業倉庫が置かれ、同駅付近村の穀物取り扱いを行った。