二、沿革の大要 明治四十四年二月連絡統一ヲ図ランガ為メ本村十一ノ部落青年会ヲ連合シ別項会則ニヨリ
三妻村青年会ヲ創設シ同時ニ十一ノ支部ヲ置キ以テ今日ニ至ル
三、現在会員 三百五十五人
四、現任役員 会長 有田善吉 副会長 山田福三郎
評議員 小林利輔 菊地武四郎 高橋敏一郎
有田七太郎 宮本忠雄 倉持一郎
増田唯一郎 猪瀬重右衛門 大山吉三郎 飯塚松吉
理事 柳田喜市 手塚邦一郎 菊地善作 小野村佐一郎 小久保徳太郎 木村定吉 大久保正寿
会計 柳田長左衛門 増田唯一郎
五、資産及維持方法
一、不動資産 十一円 二、本会基金財産 二百円
三、維持方法 経常費総額 百十九円二十銭
内訳
金十四円二十銭 会費 金三十五円 村費補助 金三十円 村内父兄寄附 金四十円 生産物共同販売組
合ヨリ生スル活動資金 外ニ金七十四円 補助教育費ハ村費支弁トス
六、会則(略)
七、事業及其成績
会則第四条、第五条ニ基キ施設シタル事業及其成績ノ概要左ノ如シ
(イ)修養上ニ属スルモノ
一、風教上ノ改善、智徳ノ向上及ビ常識養成ノタメニ時々知名ノ士ヲ聘シ講演会ヲ開ケリ
開会年月日並ニ講師次ノ如シ
明治四十五年十二月十六日 | 講師 | 鶴見水海道中学校長 |
渡辺華洲塾主 | ||
大正二年三月十五日 | 講師 | 山峰芳琇師 滝川郡長 |
同年十二月十四日 | 同 | 福田司令官 坂本郡長 |
高松養右衛門 | ||
大正三年三月一日 | 同 | 坂本大佐 坂本郡長 松山貫道 |
大正四年三月七日 | 同 | 坂本郡長 馬場大佐 |
井上本県師範附属校訓導 | ||
大正五年三月五日 | 同 | 栗田勤 県農会技手渡辺源五郎 |
大久保龍城 | ||
同年三月廿五日 | 同 | 本県技師深作雄太郎 |
二、講習会並講話会 実業上ノ改良進歩衛生思想ノ発達及常識養成ノ為メニ講話会並講習会ヲ開ケリ、其
開設左ノ如シ
明治四十四年三月十一日 蚕業講話会
明治四十五年一月十八日ヨリ三日間 農事改良講習会
大正元年十一月十五日 時事講話会
大正二年八月十日 堆肥講習会
大正三年十月十二日 衛生講和会
同年三月十二日ヨリ三日間 蔬菜栽培講習会
同年四月一日 蔬菜栽培実地指導会
同年四月十二日 稲作改良講話会
同年十月五日 麦作改良講話会
同年十月十八日ヨリ三日間 時局ニ関スル講話会
大正四年三月三十日 果樹栽培講話会
大正五年三月三十一日 蔬菜栽培講話会
八月十二日ヨリ五日間 農業講習会
三、巡回文庫 本文庫ハ明治四十四年ニ開設シテ爾来年々金三十円ノ新刊書籍ヲ購入シテ之ヲ甲乙丙丁号
ノ四函ニ分蔵シ十一支部長管理ノ下ニ会員一般ニ巡回閲覧セシム、現在蔵書三百五十六巻ニ達セリ
四、視察員ノ派遣並ニ報告書 役員並ニ会員ニシテ其相当業務若クハ専攻科目ニツキ特ニ研究セントスル
モノニハ費用ヲ給シ視察トシテ派遣シ其状況ヲ報告セシム
一、農業組合法講習会 二回、 一、実業視察員 六回、 一、青年会状況視察員 三回、
一、生産物販路視察員 二回、 一、県農事試験場視察 一回、 一、地方改良講習会 二回
五、体育ノ奨励 毎年秋季小学校児童及軍人分会員ト合同シテ運動会ヲ行ヒ(イ)又各字ノ休養日ヲ利用シ
テ角力ヲ取ラシメ以テ身体ノ鍛練ニ努メシム
六、補習教育 本会員ニシテ年齢壮丁ニ達スル迄ハ村立農業補習学校ニ入学セシメ左ノ期間及学科目ニツ
キ補習教育ヲ施シツヽアリテ其ノ成績左ノ如シ
一、期間 毎年十二月ヨリ翌年三月ニ至ル四ケ月間
二、毎夜ノ教授時間 二時間宛
三、学科目 修身 国語漢文、算術(筆算、珠算)農業及科外講演(精神修養、農業、衛生、其他)
四、補習学校創設以来青年会員ノ修了者左ノ如シ
明治四十一年度 二十人、 明治四十二年 三十一人、 明治四十三年 三十一人、
明治四十四年 三十四人、 大正元年 三十七人、 大正二年 二十八人、
大正三年 三十八人、 大正四年 三十八人、 合計 二百五十七人
(ロ)協同的事業
一、規約貯金組合 勤倹貯蓄ノ美風ヲ養成シ兼ネテ産業組合ノ資金ヲ造成センカ為メ共同規約貯金組合
ヲ組織シ郵便貯金ヲ奨励シツヽアリ其ノ成績次ノ如シ
大正五年十月調
名 称 | 区 域 | 事務所所在地 | 貯蓄開始年月 | 貯蓄人員 | 貯蓄金額 |
三青規約貯金組合 | 補習学校第一回入学者 | 三妻尋常高等小学校内 | 明治四十一年五月 | 一五 | 円 六八・五〇〇 |
沖之坂 同 | 三妻村大字三坂字沖之坂 | 同 | 明治四十三年三月 | 七 | 二六・八一〇 |
白 畑 同 | 同 字白畑 | 同 | 同 | 八 | 四五・六〇〇 |
上之坂 同 | 同 字上之坂 | 同 | 同 | 五 | 四五・〇〇〇 |
山戸内 同 | 同 字山戸内 | 同 | 同 | 八 | 二五・六〇〇 |
中 坪 同 | 同 字中曽根 | 同 | 明治四十二年六月 | 一二 | 八六・九三五 |
五 家 同 | 同 字五家 | 同 | 大正四年一月 | 一九 | 八八・六〇〇 |
中坪青年同 | 同 字中坪青年 | 同 | 明治四十二年十二月 | 二二 | 四〇・五〇〇 |
十 家 同 | 同村大字中妻字十家 | 同 | 明治四十三年三月 | 一四 | 七一・九五〇 |
寺 前 同 | 同 字寺前 | 同 | 同 | 六 | 一八・九〇〇 |
後 宿 同 | 同 字後宿 | 同 | 同 | 一二 | 八四・四〇五 |
根新田 同 | 同 字根新田 | 同 | 同 | 四 | 一九・八〇〇 |
本中妻 同 | 同 字本中妻 | 同 | 同 | 六 | 四九・八〇〇 |
沖ノ内 同 | 同 字沖ノ内 | 同 | 同 | 二三 | 一二五・〇五〇 |
三妻村蔬菜 同 | 三妻村蔬菜組合十一支部 | 同 | 大正四年十二月 | 一一 | 九・〇〇〇 |
計 | 一七二 | 八〇六・四九〇 |
二、指導標建設 明治四十四年二月全村五十ケ所ニ建設シ大正二年四月全部改設ス、大正四年危険ノ個
所ニ注意標ヲ増設ス
三、共同試作地 農業上ノ改良上進ヲ計ランガ為メ、各支部ニ共同試作地ヲ設ケテ耕作ヲナサシム、其
収益ハ各其支部ノ基本財産ニ蓄積ス、現在蓄積金ヲ有スル支部ハ左ノ如シ
支 部 名 | 現在蓄積金 | 支 部 名 | 現在蓄積金 |
円 | 円 | ||
白畑支部 | 一〇・〇〇〇 | 南部青年会支部 | 四〇・〇〇〇 |
十家支部 | 三五・〇〇〇 | 沖之坂会支部 | 五〇・五〇〇 |
中部青年会支部 | 三〇・〇〇〇 | ||
外ニ桑畑一反歩大正四年十二月金二四〇円ヲ 以テ買入ル |
四、堆肥奨励 大正二年八月肥料ノ経済ヲ計リテ農業ノ発展ヲ期センガ為メ、会員組合規約ニ基キ堆肥
舎ノ設備ヲ奨励セリ、之ガ為メ堆肥舎ノ設備現在数二百十舎ニ達セリ
五、蔬菜栽培組合 本村ハ純農村ナレドモ米麦作及養蚕業ニ専ラニシテ蔬菜栽培ノ如キハ僅カニ自家用
ニ充タスニ過キザリキ、故ニ此等主要農業ノ余力ヲ以テ蔬菜ヲ栽培シテ一般ニ園芸趣味ヲ普及シ本
村ノ特産物ヲ造リ出スヲ以テ目的トシ、大正三年三月先ツ本会ヲ以テ蔬菜栽培組合ヲ組織実行セリ、
而シテ同年度ハ総会ノ決議ニ基キ牛蒡一種ヲ栽培セリ是レ比較的主要農業ニ影響少ク且ツ栽培簡易
ニシテ最モ土地ニ適スルト認メタルガ故ナリ
(1)講習会 会員ノ園芸趣味ヲ涵養シ蔬菜ノ栽培法ヲ研究改良シ以テ本組合ノ成績ヲ優良ナラシメンガ為メ
ニ講習会及実地指導会ヲ開クコト左ノ如シ
大正三年三月十二日ヨリ三日間 蔬菜栽培講習会
講師 郡技手 倉田龍次郎
大正三年四月一日開会 蔬菜栽培実地指導会
講師 同
大正五年三月三十一日開会 蔬菜栽培講習会
講師 同
(2)種子購入 種子ハ規約ニ基キ各支部ヨリ所要数量ヲ申出テシメ本会ニ於テ一手ニ購入シ之ヲ各支部ニ分
配ス各年度購入種子量左ノ如シ
種 子 | 大正三年度 | 大正四年度 | 大正五年度 |
牛 蒡 | 升 一〇・〇〇 | 升 二一・八五 | 升 三六・一〇 |
(3)作付反別及生産高 会員次第ニ園芸趣味ヲ喚起シ種子ノ撰択ニ注意シ栽培法ヲ研究改良シツヽアルガ故
ニ年ヲ逐フテ作付反別及生産高ヲ増加セシコト左表ノ如シ
年 度 | 種類 | 生産高 | 作付反別 | 反当平均 |
貫 | 反 | 貫 | ||
大正三年 | 牛蒡 | 七、四〇〇 | 一〇・〇 | 七四〇 |
大正四年 | 同 | 二一、八〇〇 | 二一・八 | 一、〇〇〇 |
大正五年 | 同 | 四三、三二〇 | 三六・一 | 一、二〇〇 |
備考 本表大正五年度生産高ハ各支部組合員ニ於テ本年已ニ抜キ取リタル分ノ成績ニ基キ一般ノ作柄ニヨリ確実ト認メタル収穫ノ予想高ヲ徴シテ掲ケタルナリ
(4)生産共同販売 会員ノ生産物ハ規約ニ基キテ本会ノ通知ニヨリ組合事務所ニ出荷シ評価委員ノ審査ヲ経
優劣ノ等級ニ区分シテ常総鉄道ニ依リ之ヲ東京市場ニ輸出販売セリ、但シ生産品ノ増加及市場販売ノ都合
ニ依リ本会ヨリ予メ審査期日並各部割当輸出数量トヲ定メテ通知シ数回ニ之ヲ行ウコトトセリ、左ニ其数
量ヲ示ス
年 度 | 品 名 | 輸出市場 | 第一回 | 第二回 | 第三回 | 第四回 | 輸出総額 | 売上総価格 |
貫 | 貫 | 貫 | 貫 | 貫 | 円 | |||
大正三年 | 牛 蒡 | 東京市 | 八六〇 | 一、〇五五 | 五二四 | 〇 | 二、四三九 | 二三七・二九八 |
大正四年 | 同 | 同 | 一、二四〇 | 二、四一五 | 二、一八五 | 一、五一〇 | 七、三五〇 | 七六四・四〇〇 |
大正五年 | 同 | 兵 庫 | 二、八〇〇 | ― | ― | ― | 二、八〇〇 | 六二七・二〇〇 |
備考 大正五年度分ハ本年度第一回ノ初輸出ニシテ全生産額ノ一部ナリ、而シテ又兵庫市場ハ今回初取引ニ
シテ販路拡張ノ第一歩トス次回十二月ニ入リテ数回ニ輸出スル予定ナリ
生産額ト輸出額トノ差ハ自家用並地方販売ニ属ス、組合員ノ都合ニ依リ随時ニ自家用又ハ地方販売ヲ
ナスコトヲ許ス
(5)輸出品ノ声価 前項ニ述ベタル如ク本組合員一致共同シテ品種ノ撰択、栽培法ノ研究改良ニ努メタルガ
故ニ従来ノ面目ヲ一新シタルコト顕著ニシテ品質優良ナルモノヲ産出スルニ至リ其輸出品ハ大イニ市場ノ
賞讃ヲ博シ声価益々昂リテ東京市場ハ勿論遠ク関西ノ大阪兵庫神戸等ヨリ販売契約ヲ申込ミ来ルモノ頗ル
多キニ至レリ、故ニ販路ヲ拡張シテ益々本事業ノ発展ヲ計リ当初ノ目的即チ牛蒡ヲ以テ本村ノ一特産物ト
ナサンコトヲ期シ本年ハ前表ニ示スガ如ク兵庫ニ向テ第一回ノ輸出ヲ試ミタリ
(6)園芸共進会出品 結城郡園芸共進会ニ於テ本組合員ノ牛蒡出品受賞者左記ノ如シ
大正四年十一月 | 結城郡園芸共進会 | 一等賞 | 牛蒡 |
小林清次郎 | |||
大正五年十一月 | 同 | 一等賞 | 同 |
小林清次郎 | |||
同 | 同 | 一等賞 | 同 |
上野卯之助 | |||
同 | 同 | 二等賞 | 同 |
森好三郎 | |||
同 | 同 | 二等賞 | 同 |
皆葉保 |
八~十一(略)
十二、兵士ノ送迎会
従来入営者若クハ満期帰郷兵アル毎ニ或ハ旗ヲ押シ立テ或ハ烟花ヲ打揚ケ又ハ酒食ノ饗応ヲナス等徒ラ
ニ虚礼虚飾ヲ競ヒ(イ)テ相互ニ少ナカラズ贅費ヲ要スルノ弊風アリキ、本会之ヲ遺憾トシ本会員ノ在郷軍
人分会員小学校職員児童合同シテ本村小学校庭ニ送迎会ヲ開キ厳粛ナル記念品贈呈式ヲ挙ゲ以テ意義アル
送迎ヲナサントシ明治四十一年度ヨリ実行セリ
一三、休養組合
従来農家青年ノ休養日ハ区々ニシテ一定スル所ナク各部落毎ニ其日ヲ異ニスルガ故ニ相互ニ隣接部落ノ
青年ニ影響ヲ及ボシ稍青年勤労ノ美風ヲ損スルノ患アルヲ以テ本会之ガ統一ヲ図リ各部合議ノ上旧例ヲ全
廃シ毎月一日十五日ノ両日ヲ青年休養日ト一定シ当日正午ヨリ休養スルコトヽセリ
但シ各支部試作地ノ手入作業ニハ此休養日ヲ利用スルコトヽス
一四、協援会
大正三年八月会員互助ノ方法トシテ協援会ヲ組織シ各支部ニ置キテ会員相互ノ発展ヲ図ル
(一)入営兵士ノ家業補助 (二)貧困家族ノ救護
一五、品評会
毎年一回農産物品評会及藁細工品評会ヲ開催シテ斯業ノ奨励ヲナス(三妻村農会ト合同)而シテ其出品品
物ハ全部小学校基本金ニ寄附ス、其金額左ノ如シ
明治四十四年 | 大正元年 | 大正二年 | 大正四年 |
円 三〇 | 円 三三 | 円 二五 | 円 二一・六〇 |
一六、支部各自ノ事業
(1)荒蕪地ノ開墾植樹等ヲナシ基本金造成ヲ計リ或ハ共同耕作ヲナシテ其益金ヲ蓄積ス
(2)縄綯器械ヲ購入シテ共同作業ヲナス
(3)暗渠法ヲ実行シテ二毛作経営ヲナス
〔大正六「茨城県農会農業成績並副芸品共進会報告」 県立歴史館史料室〕