○小学生徒運動会
客月初旬豊田郡水海道駅の小学生徒が同駅の南手なる報国寺に於て運動会を催ふせし。概況を聞くに、男生徒を勇壮、剛毅、強忍の三態に分ち之に喇叺兵を加へ、女生徒を貞操、温順の二隊に分ち之に各青黄の小旗を携帯せしめ、総勢凡そ四百名隊伍整斉として報国寺へ出行し同所に於て徒手球竿亜鈴の三体操及旗等を為せり。当日は郡長川田氏の臨視ありて一同へ菓子若干を給与し、殊に同地の書肆新々堂、明文堂の主人は非常の尽力にて行厨結飯を寄贈し且つ青木伊兵衛、五十畑丹蔵、五木田彌五郎の三氏よりは砂糖水、本津勘兵衛氏よりはレモン水等の寄贈ありたるよし。当日は天気も清朗なりしを以て来観人も夥多参集せしとのことなり。又北相馬郡第一番学区に於ても其後小学生徒の運動会を催ふせしよしなるが生徒の総数は三百余名にして年齢に随ひ男女各弐組に編制し予て設け置きし利根川畔の運動場へ繰出し同所に於て開会式を挙行し取手校の教員大江氏の演説其他二三名の祝文朗読演説等あり。終て男生徒の徒手及器械体操隊列運動旗奪女生徒の抛嚢及男女生徒の競争等を行ひ広瀬郡長も臨場し其他有志者見物人無慮五百人優等生へは筆墨紙等を賞与せらりたりと云ふ。
〔『茨城教育協会雑誌』三〇号 明治一九年八月一二日〕