7 内守谷購買組合

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○設立の動機及其沿革 戦後国運の発展を計り各自の福利を増進せんには隣保相和し勤倹己を持し戮力協心以て農事の改良発達を図ること最も急務なりとし同組合を組織するに至れり
○設立当時の状態 組合設立前に於ける現組合の過半は適当なる肥料を得るに苦しみ偶々其供給を受くることあれば高価の肥料にあらざれば則ち不正の肥料なりしを以て不完全と知りつゝも猶緑肥又は堆積肥料にのみ依頼するもの多くこれが為めに十分の収穫を得ること能はずして僅に労役に対する賃金を贏(ゆ)得するに過ざりしかば到底余裕の生すべき見込なく漸次衰退の有様なりき
○設立当事者の苦心 如上の状態なるを以て瀬崎忠兵衛氏外三名は一日も早く此窮状より救済の道を講ぜんとして同組合を組織したりしが当時村内多数のものは未だ購買組合の何者たるを解せず故に組合員たらんことを勧誘するも皆逡巡して応ずるものなく甚しきは組合の設立に反対して或は是れ発起人等が一時の流行と虚栄心とに駆られて企画する事業なれば到底永続の見込なきものと流説し或は組合を設立するは発起人等が自己の利益を計らんが為めに資金を集めて之を利用せんとするものなりと云ひ以て陰に陽に設立の妨害を試みたるが為めに一旦組合設立に同意したるものも忽ち疑惧の念を起し賛意を飜へすもの等ありしが発起人は一意専心組合設立の利益を説破し時に或は講話会を開きて其性質を知らしむるに努め或は毎戸に就き他の実例を引て詳細の説明を与ふる等頗る苦心の結果漸次其利の任する処を自覚するに至り玆に百八名の同意を得て始めて其設立を見るに至れり
○効果 同組合は三十九年の設立にして日尚浅く未だ顕著なる好果を見る能はずと雖も農業者は肥料其他日用品購入に就き価格の低廉にして品質の優良なるものを得るの便を得たるを以て一面には農業上大に改良する処あり収穫の増収あると同時に一面には生計の費用の幾分を減殺し得る為め稍々其旧態を脱して初期の目的に近つきつゝあり
○現今組合事業の一般 同組合の組合員は百八名にして出資口数は僅かに二百口とす而して一口の金額は金十円なるを以て総資金二千円に過ぎず故に未だ十分の活動を為すこと能はずと雖も昨四十年の如きは購買額金五千三百余円にして本年亦既に八月一日現在に於て二千二百九十八円に達せり是れを以て之れを推すに本組合は尚将来に於て事業を拡張するの余地を存す以上の如き状態にして組合員は漸次組合の利を知得し組合を好愛するの観念を生じ何れも好意を以て組合に接近するに至り昨今概して佳良の成績を収めつゝあり
                               〔『いはらき』 明治四二年四月六日〕