昭和十八年六月二十日 第一号便
御挨拶 水海道町長 神林鎮男
最初に従軍各位の御辛苦に対しこころから感謝申上るとともにいよ/\御健勝ならんことをいのります。
事変前の十年はいまの一ト月にも当らないほどの速度で、今日本は大転換をしています。その劇しい自転の上に国民は一切の私情をふり捨てゝ戦力増強のために一身を抛って立ています。
雄々しい日本の姿がこれです。以前の帰還兵は「内地にかへって見て現地の緊張とあまりにもかけ離れた実情」に落胆したものです。私もその一人でした。しかし今度という今度こそは一億一丸の緊張した国民総進軍です。
小さくとも吾が水海道町もこれに遺憾はありません。
どうぞ御安心下さい。
銃後奉公会は一意専心戦線と銃後の連絡、遺家族の御相談等目的の達成に懸命の努力をいたします。何かと御きかせ願ひます。以上かんたんに御挨拶まで。
御慰問のことば 主事 有松八郎
御稜威のもと大東亜戦は緒戦より連戦大捷、実に大慶の至りです、是れは第一戦の皆々様の滅私尽忠報国の御死闘に因ることゝ感謝いたしています。
時局は益々多端一層の御苦闘を前線も銃後も致さねばなりません。皆様におかれましては、充分御健康に注意遊ばされ邦家のため、最後まで御奮戦を願ひます。
小生去る三月一日付け現銃後奉公会長の命を受け、不肖の身を顧ず銃後奉公会主事の重任を担ふことになりました。
第一線に御奮戦の皆様の御苦労を偲び、せめて不肖の身にも成し得る又成さねばならぬこともある筈ず、と考へ玆に御引受いたしました。
不肖の身皆様及皆様の御家族の一人/\に充分御満足頂けると云ふことは不可能と存じます。併し例へ自分には出来ないにしても報国精神に燃えた多くの、銃後奉公会員を有する奉公会です。必ず会員はやって下さると信じます。又その様お願ひいたしています。
銃後奉公会主事として、此の後挨拶の時一言その念願とするところを申述べさせていただきますならば、
大切な一家の大黒柱の皆様を邦家を万代の基礎に置くため、喜び勇んで皇国に献げられ、苦しみも、淋しさも凡てを捧げて御奉公に勤しまれる、皆様の御家族を心から慰め出来る様、銃後を護り堅めねばならぬと考へています、此の点を左様御承知願ひます。何かの御参考にと考へ銃後奉公会役員表を同封しその陣容をお知らせします、御挨拶を終るに当り皆様の
祈 武 運 長 久
乍ら御別れいたします。
翼賛壮年団便り
昨年九月、神林団長の助役就任により、草間静団長を戴き、陣容を改め、常に戦時態勢下町民生活の先頭に立って張切った活躍をつゞけて居ります。
電力節約―聖戦下莫大な軍需電力をまめに電燈スイッチをひねることによって産み出さうと云う運動を昨年十月初めより実施、町民各位の絶大なる御協力により立派な成績をおさめつゝあり、全国にさきがけて昼夜送電を実施する、その結果三分の一の電線が不要となり来る六月にはこれを取はづすことになりました。
銅鉄回収―昨年十二月八日団員は鬼怒川に於て禊行を行ひ尊王絶対生命奉還を誓ひ、町役場に協力して銅鉄回収運動を開始し、町民各位の燃え上る愛国心にうったえて一戸当り十三貫といふ県下第一の成績をあげることが出来ました。
三月に役員が代り、久保村市男氏が団長となり、供木運動を開始現在にいたる。これもおそらく県下有数の成績を予想して居ります。銃後の郷土かくの如し、皆様御安心下さい。
(文書主任記)
国民学校だより
第一線の勇士の皆様方へ近況をお知らせいたします。
○忠霊室が出来ました
学校の玄関三階の塔をきれいに洒掃した中に殉国忠霊録と戦地からのお便りとを桐箱に納めて第一線の皆様方の努力に感謝することにいたして居ります。
○報国貯金の目標をきめました
昭和十八年度に於ける水海道国民学校児童一千三百六十六名の貯金目標は一万六千三百円で貯金日は毎月十日です、来年三月末日までには割当目標額を美事に突破する覚悟をきめました
○増産方面
今年から報国農場を作ることになりました。田の方はもうすぐ用意出来ると思ひますが畑はまだです。学校敷地内の空地は勿論のこと垣根のまはりには日向葵五百本植えました。いまにきれいな花が咲きやがて実をむすぶことゝ思ひます、それに麻もヒマも南瓜も元気にそだっています。
只分こちらはあかるい若葉の候です。私達は衣料繊維増産のために桑皮を剝ぎとっています。六月十五日頃からは出征なすって居られます皆様方のお家のお手伝をする予定です、いまに麦刈もやって来ます。その内蚕も上蔟するでせう。
適度の雨が降って田の水も出来お百姓様方は元気に働いています、本年も作物は大丈夫です。
神韻渺茫四顧の間、見ゆる限り純粋なる日本の空であります、神々しくあまりに強い日本の兵隊さん、もったいなくて口で強いなどとは申上げられません唯感謝あるばかりです。
町の出来ごとより
○町の出来ごとを申しますと時局柄山程あります。
翼賛生活を実践して第一線の戦果に応へて奮闘している町民の日々の姿は到底此の紙面には尽せません。故に特に是れはと思ふ出来事をお知せしてお喜び願ひたいと思ひます。
○神林鎮男氏町長となる
青年町長が生れました、水海道町創立以来の最年少町長でせう、在任六ケ年の永きに渡って老体をも不厭町政を指導し職に功を積まれて塚田節氏をしまれて去られました、時局柄寸時も猶予出来ない事情直ちに町会は満場一致で前助役神林鎮男氏を昇格町長と推薦決定しました。銃後奉公会長も又町長就任となりました。神林町長の政治的経歴から同氏に期待する所甚大であります、何卒一層の御奮闘を祈ります。
○水海道町勤労報国隊出発
当町では昨年より既に六ケ隊の勤労報国隊を出しました奉仕する所は炭鉱です、皆元気です、やがて女子勤労報国隊の第二班が出かけます。次便ではその写真を入れてお送りする予定です。
○銃後家庭婦人の家庭防護に鉄壁を期す
婦人常会
四月上旬でした銃後奉公会では婦人常会を各町内会毎に召集し警察署長、銃後奉公会部長等出席、時局と家庭生活の重要注意事項をお話して銃後家庭の鉄壁の守りに就き御協力をいただくことになりました。
○各町内会部落会に軍人援護部長が生れました
時局は大変です、銃後奉公会事業は強化せねばなりません、それには町内会部落会の此の方面の仕事の実践者が必要です、そのために此の援護部長の働きに期待する所多いのです。その方々をお知らせします。
高野 | 荒井伊三雄 | 亀 岡 | 大場義徹 |
峯下 | 堀越留吉 | 台 町 | 石塚源市 |
新町 | 富山静三郎 | 横 町 | 五木田健次郎 |
宝町 | 飯塚文雄 | 諏訪町 | 須田誠市 |
〃 | 五木田敏夫 | 渕 頭 | 菊地信次郎 |
橋本 | 笠原政雄 | 山 田 | 山本武十郎 |
森下 | 片野新吉 |
○警防団町営となる
永い歴史と伝統がある故中々困難と思はれていました警防団も新生することになり四月中旬すっかり新しい姿を整へ新団長神林鎮男氏統率の下に分団を五分団とし是れに本部付一分団を作り陣容は整備され完全に町営となりました。
○春期農繁期増産労力奉仕
出征軍人農村家族の留守宅に奉仕する何千人の労力奉仕者が、六月十日から毎日三三五五隊を組んで出動、翼賛壮年団は二日間午前三時五十分暁天動員して出征家族の農家へ奉仕しました、各種団体も一日奉仕しました、六月末日頃には全町民が出動して町内全農家への奉仕をなす等あげて食糧増産に懸命です。
○建艦資金集る
五月の常会事項を実践して建艦資金を募集しました処応募者多く町民の時局認識の度が益々増し加はっている事は誠に喜ばしい事です。
○カメラクラブ員撮影に一日奉仕
同封の御家族の御写真が五月十日に午前七時より午後五時まで町長始め八、九名の奉仕者によって皆様思出の大師山公園に御家族のお集りを願って撮影したものです。よく出来ています。何卒充分御覧下さい皆様の御家族はかくも御健康です。
○この外に御通信申したい事は山程ありますが紙面に限りあります故残念乍ら後便といたします、銃後の模様を御承知下さいまして御安心願ひます。
茨城県結城郡水海道町 水海道町銃後奉公会発行(責任者有松八郎)
〔水海道市役所蔵〕