旧石器時代の生活

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旧石器時代は、地質学でいう最新世後期に相当する。この時期は、現在よりかなり寒冷で乾燥していた。特に今から二万年程前は、ヴュルム氷期の最寒冷期であった。そのため、高緯度地方はかなりの地域が氷河に覆われ、海水面も現在より低かったので、日本列島は大陸と陸続きになっていた。このような環境は、食料である植物や動物の生息においても、現在とは大きな違いを生じさせた。また、大陸との往来が可能であったため、文化や物資が比較的容易に伝播したと考えられる。
 こうした環境のもとで、彼らは山野において採集活動や、ごく初歩的な漁撈活動、狩猟活動を行なって生活していた。特に、狩猟活動においては今日では絶滅してしまった大型獣(ナウマンゾウ、マンモス、オオツノジカなど)をその対象としていたようである。
 

I-2図 ヴュルム氷河期の日本列島(『茨城県史』原始古代編より改変)

 しかし、この生活も幕を閉じる頃がやってきた。それは気候の激変によってもたらされた。地球全体の温暖化による海水面の上昇は、大陸と陸続きであった日本を列島と化した。そのため、人々の居住域や食料獲得方法は変化を余儀無くさせられ、さらに拍車をかけたのが、土器の発明であった。土器による食料の煮沸は、人々の食生活を大きく転換させていった。こうして、新たな文化をもつ縄文時代への胎動が始まったのである。