屋敷取り

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当地方の農家の家屋の配置は、日当たりの良いように南または南西の向きの母屋を中心として、納屋・便所・木小屋・味噌部屋などが配置され、屋敷の周りに生垣や塀があるのが一般的である。
 まず、生垣は「日光おろし」や「筑波おろし」といった風と、それにまき上げられる埃を防ぐ目的や防火の役割も果たすもので、そこには樫・檜・杉・欅・孟宗竹といった樹木が植えられている。家の前や道沿いの垣根はクネともいい、年末にはその修復であるクネ結いがなされていた。
 付属建物の一つである納屋は、農道具や刈り取った稲・麦束などを置くもので、ナガヤとも呼ばれてきた。また、便所はチョーツバと呼び、糞尿を肥料として使っていたので便宜上堆肥小屋の脇に建てられていたものである。木小屋は燃料の薪や粗朶を置いておく建物であり、味噌部屋は味噌・塩・醬油・漬物樽を保管しておくところで、いずれも母屋のすぐ裏に配置してある。この他に屋敷内には人々の生活に不可欠な井戸や屋敷神を祀る祠がある。農作業の場であった庭は冬に藁シビが敷かれて、霜柱の害から守る配慮もされてきた。
 

Ⅴ-10図 民家の遠景(落合信氏提供)