家の相続

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町内各地とも家の相続の形で一般的なのはソウリョウ、アトトリと呼ばれる長男による単独相続である。相続の時期は家の事情により異なるが、だいたいはソウリョウが嫁を迎え、子供が出来、生活が安定してきた頃に行なわれた。
 相続により、ツウリョウが家長としての地位を譲渡されると共に、ソウリョウの妻である嫁も主婦としての地位を与えられた。またこれによって日々のやりくりはもちろん、近隣づきあいやムラの寄合、普請の際の出役さらには庚申講、観音譜への参加など家の代表者としての役割もソウリョウ夫婦によって引き継がれるのである。
 これに対し、家督を譲った方は隠居ということになるが、ソウリョウ夫婦と分れて別棟に住むような形をとる例はほとんどなく、母屋で同居を続けた。また二、三男や女子についてみると、二、三男が田畑を分与され、同じムラ内にシンタク(分家)する場合は少なく、婿養子に出るか、手に職をつけるために奉公に出た。そして女子の場合にも嫁に行くまでは、子守りとして奉公に行く者や、機屋の織り子として働く者などかなりあった。
 また家のアトトリがない場合や子供が女子だけの場合には養子が迎えられることが多かった。前者のような養子をとるには身内の者が望ましいとされ、夫方の甥・姪がアトトリとして迎えられることが多かった。後者は婿養子のことで血縁に関係なく、二、三男が迎えられた。当時はムラ内で養子のやりとりが盛んに行なわれていた。
 

Ⅲ-12図 相続の事例