〔御親書 小松宮説諭〕現代語訳

 
〔御親書 小松宮説諭〕

さきに 鹿児島で暴徒が
起き 官軍にあらがい 戦争に
明け暮れ 殺傷はすこぶる多く
その惨状は言葉にできないありさまである
このような中 諸君は兵を救護するとの
慈悲の心から 国に報いるべく義務を
果たし 奮起して博愛社を
立ち上げた。この誠意は
天と人とを感動させ
天皇陛下から支援を賜り 一般の民からも
寄贈があった。 会社は盛んにつとめを
戦争中にはたし 救済した傷者は
少なくない 諸君のはたらきぶりには
実に考えさせられる。
これ以上の国家の美事があるだろうかと。
嘉彰は未熟ながらも諸君の
推挙により 博愛社の総長の
任を受ける 私の才能が
及ばずとも これを辞退することは嘉彰の
こころざしに背くものであるから しばらく
この任を負担しよう 諸君
よろしく 心を一つにして 力を合わせて
嘉彰と共に 本社(博愛社)の永設の
基礎を作り その組織を盛大に
することをもって 設立の主旨を果たして
ほしい これが 嘉彰より諸君に
強く 希望するところである

明治十年十二月 二品親王嘉彰